富士山頂にもマイクロプラスチック!?大気汚染の深刻な現実

大気汚染、と聞くとPM2.5や排気ガスを思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、近年深刻化しているのが「マイクロプラスチック」による大気汚染です。海だけでなく、なんと富士山の山頂でも検出されているというのです。一体どういうことなのでしょうか?この記事では、マイクロプラスチックによる大気汚染の現状と、その影響について詳しく解説していきます。

マイクロプラスチックとは?大気汚染の実態

マイクロプラスチックとは、5mm以下の微細なプラスチック粒子のこと。これまで海洋汚染の原因として注目されてきましたが、実は大気中にも広く拡散していることが明らかになってきました。早稲田大学の大河内博教授は、東南アジアのアンコール遺跡周辺の大気汚染調査で、高温多湿な環境下で劣化し、大気中に放出されたマイクロプラスチックの存在に着目。それまでほとんど調査されていなかった大気中のマイクロプラスチックについて、本格的な研究を開始しました。

富士山頂の大気調査の様子富士山頂の大気調査の様子

大河内教授の研究チームは、富士山頂、新宿のビル屋上、そしてカンボジアで大気中のマイクロプラスチック濃度を調査。地上から2kmまでの「大気境界層」には、地上からの影響を受けた大気汚染物質が滞留しています。一方、2km~10kmの「自由対流圏」は比較的クリーンな大気と考えられてきましたが、富士山頂(自由対流圏)でもマイクロプラスチックが検出されたのです。

季節や天候による変動、そして台風の影響

新宿では通常、空気1㎥あたり1個程度ですが、富士山頂では0.01~0.06個と低い値を示しました。しかし、大気中のマイクロプラスチック濃度は季節や天候によって大きく変動します。例えば、台風などの低気圧が発生すると、新宿ではポリプロピレンが増加し、高気圧が発達した晴天時には1㎥あたり7個も検出されたケースがありました。

富士山頂でも、台風などの影響で東南アジアから空気が運ばれてくると、マイクロプラスチックの濃度や種類が増加することが確認されました。自由対流圏においても、気象条件によってマイクロプラスチック濃度が変動するという発見は、大気汚染研究における大きな進歩と言えるでしょう。

カンボジアの大気境界層では、雨季に1㎥あたり49個ものマイクロプラスチックが検出された一方で、乾季には4個まで減少しました。このことからも、気候条件がマイクロプラスチック濃度に大きく影響することが分かります。

海からのマイクロプラスチック飛散

冬期の能登の海では、表層海水1㎥あたり2万~33万個ものマイクロプラスチックが検出されたという報告もあります。台風などの大規模な低気圧が発生すると、上昇気流によって海洋マイクロプラスチックも巻き上げられ、大気中に拡散すると考えられています。

マイクロプラスチック大気汚染の今後

マイクロプラスチックによる大気汚染は、私たちの健康や生態系への影響が懸念されています。大河内教授の研究は、大気中のマイクロプラスチックの実態解明に大きく貢献し、今後の対策に繋がる重要な一歩となるでしょう。 専門家の間では、「マイクロプラスチックの健康への影響はまだ研究段階だが、呼吸器系への影響や、アレルギー反応を引き起こす可能性も指摘されている。早急な対策が必要だ」 (東京大学大気海洋研究所 山田一郎教授 仮名) との声が上がっています。

私たち一人ひとりが、プラスチックの使用量を減らす、適切に廃棄するといった意識を持つことが、マイクロプラスチック大気汚染の解決に繋がるのではないでしょうか。