安倍晋三首相(自民党総裁)が細田博之元幹事長を党憲法改正推進本部長に、佐藤勉元国対委員長を衆院憲法審査会長にそれぞれ起用したのは、改憲に対する安倍政権の強硬なイメージを和らげ、野党に議論への参加を促す狙いがある。
首相は12日、細田氏と下村博文選対委員長、稲田朋美幹事長代行と官邸で面会し、憲法改正を進めるための人事を話し合った。
首相は11日の党役員会で、「長年の悲願である憲法改正を党一丸となって進めたい」と明言。秋の臨時国会で国民投票法改正案を成立させ、憲法9条への自衛隊明記など4項目の党改憲案を提示したい考えだ。
ただ、野党第一党の立憲民主党などは安倍政権下での改憲議論に応じない姿勢を貫く。昨年の臨時国会では、首相側近で憲法改正推進本部長を務めていた下村氏の発言が反発を呼び、国会審議の日程に影響が出る場面もあった。野党を議論のテーブルに着かせるには、改憲に臨む布陣の見直しが不可避となっていた。
細田氏が憲法改正推進本部長に就くのは2回目で、昨年3月には4項目の党改憲案を取りまとめた。自民党関係者は「首相に特別近いわけではなく、バランスを重視するタイプなので、野党の警戒感も和らぐのでは」と期待を寄せる。
細田氏は「憲法改正は簡単な話ではない」として就任に難色を示したとされるが、党内に適任者が見当たらないこともあり、最後は首相の意向を受け入れた。
国会議論の場となる衆院憲法審査会長に起用する佐藤氏は、野党との調整を担う国会対策のベテランだ。野党との太いパイプを持ち、水面下で“落としどころ”を探る技術は自民党内でも屈指とされる。
首相は、憲法審の開会すら嫌がる野党を解きほぐし、議論を少しでも前に進めることを期待している。(石鍋圭)