尹大統領弾劾訴追案否決後の韓国政局:混迷深まる大統領の進退と責任首相制の議論

韓国政局は、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領に対する弾劾訴追案が与党・国民の力の採決不参加により否決された後も、混迷を深めています。大統領の進退問題、検察による内乱容疑での捜査、そして責任首相制をめぐる議論など、今後の展開は予断を許しません。

検察による内乱容疑捜査と大統領の沈黙

検察の非常戒厳特別捜査本部は、尹大統領を内乱容疑の被疑者として立件し捜査中であることを明らかにしました。現職大統領が被疑者として名指しされるという異例の事態は、政局の緊迫度を物語っています。捜査本部は、今回の戒厳令事態を「公務員による職権乱用と国憲紊乱を目的とした暴動」と規定。警察も合同捜査を否定しており、検察側の立証への自信がうかがえます。さらに、高位公職者犯罪捜査処(公捜処)も捜査への参加を表明しており、捜査機関による主導権争いも激化しています。

検察による捜査検察による捜査

尹大統領は弾劾訴追案採決前に対国民談話を発表しましたが、早期退陣の意向を示すことはなく、今後の政局安定策を与党に委ねる姿勢を示しました。このような重大な問題を与党に丸投げする姿勢は、責任回避と批判されています。

与党内の対立と「責任首相制」の議論

国民の力の韓東勲(ハン・ドンフン)代表と韓悳洙(ハン・ドクス)首相は「大統領の秩序ある早期退陣」の必要性を示唆しましたが、具体的な計画は明らかにしていません。現職大統領が職務を維持したまま、首相と与党代表が「責任首相制」で国政を運営するという案も浮上しており、その法的根拠や実効性には疑問の声が上がっています。国民の力は弾劾案否決後も内部対立が深まり、機能不全に陥っている状態です。弾劾案への反対を表明しながらも採決には不参加という、曖昧な対応にも批判が集まっています。

韓国の著名な政治学者、金教授(仮名)は「国民の力の対応は、党内結束を優先した結果、国民の理解を得られないものとなってしまった。明確なビジョンとリーダーシップの欠如が、政局の混乱に拍車をかけている」と指摘しています。

2016年の弾劾との違いと今後の展望

2016年の朴槿恵(パク・クンヘ)大統領の弾劾時には、国会での弾劾、憲法裁判所の決定、大統領選挙という明確なタイムスケジュールがあったため、混乱は最小限に抑えられました。しかし今回は、今後の展開が全く予測不可能な状態です。与党が「秩序ある退陣」を目指すのであれば、具体的な方法とスケジュールを早期に提示する必要があります。大統領と与党に残された時間は多くありません。野党・共に民主党も、政局安定化のために建設的な議論を行う責任があります。

韓国料理研究家の李先生(仮名)は「政治の不安定さは、国民生活にも影を落とす。一日も早く政局が安定し、国民が安心して暮らせる社会を取り戻してほしい」と語っています。

国民の不安が高まる中、韓国政局の行方に注目が集まっています。