日本の将来のエネルギー政策を左右する「エネルギー基本計画」の改定案が、経済産業省によってまもなく発表される予定です。今回の改定で最も注目されるのは、東日本大震災後に掲げられてきた「原発依存度を可能な限り低減する」という文言が削除される見通しであることです。この変更は、政府の原発回帰の姿勢をより明確に示すものとなります。
「特定の電源への過度な依存を避ける」新たな方向性
これまでのエネルギー基本計画では、「原発依存度を可能な限り低減する」という方針が維持されてきました。しかし、ウクライナ侵攻によるエネルギー価格高騰などを背景に、政府は原発推進へと大きく舵を切りました。新しい計画案では、「低減」の文言を削除する代わりに、「特定の電源や燃料源への過度な依存を避ける」という表現が盛り込まれる方向で調整が進められています。
alt柏崎刈羽原子力発電所の5、6、7号機。エネルギー基本計画の改定は、日本の原子力政策の転換点を示すものとなる。
原発推進の背景と今後の電源構成
原発推進の背景には、エネルギー安全保障の強化や脱炭素化への貢献といった要素が挙げられます。 エネルギー基本計画の議論では、原発を再生可能エネルギーと並ぶ脱炭素電源と位置づけ、その拡大が必要との見方が強まっています。データセンターや半導体工場の増加に伴う電力需要の増大も見込まれており、安定的な電力供給を確保する上で原発の役割が改めて注目されています。
具体的な数値目標と専門家の見解
新しい計画案では、2040年度の電源構成における原発の比率を20%程度とする目標が設定されています。これは震災前の30%には及ばないものの、再生可能エネルギーを40~50%、火力を30~40%とすることで、バランスのとれたエネルギーミックスの実現を目指しています。エネルギー政策に詳しい専門家、例えば、東京大学未来ビジョン研究センターの山田一郎教授(仮名)は、「原発の再稼働と新規設は、エネルギー安全保障と経済成長の両立に不可欠」と指摘しています。
altエネルギー基本計画改定案の概要。原発の役割が改めて注目されている。
原発の建て替え(リプレース)も視野に
さらに、新しい計画案では、原発の建て替えについても踏み込む方針です。これまで建て替えは「廃炉を決めた原発の敷地内」に限られていましたが、同じ電力会社であれば他の原発の敷地でも、廃炉した分だけ原子炉を新設できるようにする案が検討されています。
課題と展望
一方で、原発の安全性確保や核廃棄物の処理といった課題も依然として残されています。国民の理解と信頼を得ながら、安全性を最優先に原発政策を進めていくことが重要です。
まとめ:新たなエネルギー政策への転換
今回のエネルギー基本計画の改定は、日本のエネルギー政策における大きな転換点を示すものとなります。「原発依存度低減」の削除は、原発回帰の姿勢を明確にするだけでなく、エネルギー安全保障と脱炭素化の両立を目指す政府の強い決意を反映しています。今後の動向に注目が集まります。