安倍晋三首相(自民党総裁)が宿願とする憲法改正に向け、参院自民党の「改憲シフト」が注目されている。首相はとりまとめ役となる党参院幹事長に側近の世耕弘成前経済産業相を起用した。野党の理解も得て議論を進められる態勢づくりを目指すが、自民党の改憲案に精通した人材が多いとはいえない。議論を進める場となる参院憲法審査会長も決まっていない。
「改憲議論は謙虚に丁寧に進めていくことが極めて重要だ。憲法審査会長は非常に重要なポストであり、それにふさわしい方になっていただきたい」
世耕氏は17日の記者会見で、臨時国会に向けた参院憲法審の布陣について、こう答えるにとどめた。
参院憲法審は昨年2月以降、実質的に一度も開かれておらず、秋の臨時国会で開催の有無そのものが焦点になっている。議論が停滞する状況に、ベテラン議員は「憲法審というものがありながら、審査をしないということはいかがなものか」と苦言を呈す。
さらに参院では、国会運営を実質的に取り仕切り、野党にも太いパイプを持つ吉田博美前参院幹事長が7月の参院選に出馬せず、政界を引退した。首相が経産相の続投に意欲をにじませていた世耕氏を参院幹事長に横滑りさせたのは、今後の改憲議論を見据えた調整力やリーダーシップに期待したためだ。
党全体や衆院側では、改憲を前に進めるための新しい布陣が着々と整っている。首相は、自民党憲法改正推進本部長に細田博之元幹事長を、事務総長に根本匠前厚生労働相を起用する方針を固めた。細田、根本両氏は再登板で、昨年3月に自衛隊明記など4項目の党改憲案をまとめている。