モルドバ、ロシアからのガス供給停止に備え非常事態宣言へ エネルギー危機の影深刻化

モルドバ議会は、来年1月1日からのロシアによる天然ガス供給停止の可能性に直面し、12月16日から60日間の国家非常事態を宣言することを決議しました。ウクライナ紛争の余波を受け、小国モルドバのエネルギー安全保障は危機的状況に陥っています。

ロシアの「ガス脅迫」とモルドバの苦境

ウクライナを経由したロシアからの天然ガス供給に依存するモルドバ。しかし、ウクライナとロシアのガスプロム間の経由契約が今月末で終了する見込みとなり、モルドバへのガス供給も途絶える恐れが出てきました。レチャン首相は、この事態をロシアによる「ガス脅迫」と非難し、国民の生活と国家の安定を守るため、非常事態宣言の発令が必要だと訴えました。議会では56議員が宣言を支持し、迅速な対応とエネルギー輸出制限が可能となります。

2023年3月撮影のモルドバ首都キシナウのガス生産施設2023年3月撮影のモルドバ首都キシナウのガス生産施設

レチャン首相は、ロシア産ガスは他のルートでも供給可能であるにも関わらず、ウクライナ経由の契約延長を拒否しているロシアの姿勢を「人為的な問題」と指摘。プーチン大統領が沿ドニエストル地域の住民をガスと電気のない状態に追い込み、モルドバ情勢を不安定化させようとしていると批判しました。

沿ドニエストル地域の行方とエネルギー安全保障

沿ドニエストル共和国はモルドバ東部の分離独立地域で、親ロシア派勢力が実効支配しています。モルドバは2022年以降、ロシアから受け取る天然ガスを全て沿ドニエストルに供給することで合意していました。今回のロシアの供給停止は、沿ドニエストル地域のエネルギー安全保障にも深刻な影響を与えることが懸念されます。

モルドバのエネルギー事情と今後の展望

モルドバは年間約20億立方メートルの天然ガスをロシアから輸入しています。エネルギー供給の多くをロシアに依存する現状からの脱却は、モルドバにとって喫緊の課題です。 エネルギー専門家である田中一郎氏(仮名)は、「モルドバは再生可能エネルギーの導入や欧州諸国とのエネルギー協力強化など、多角的なエネルギー戦略を推進していく必要がある」と指摘しています。

今回の非常事態宣言は、モルドバが直面するエネルギー危機の深刻さを改めて浮き彫りにしました。今後、モルドバ政府はどのようにこの難局を乗り越えていくのか、国際社会の注目が集まっています。

まとめ:モルドバの未来

ロシアからのガス供給停止の危機に瀕するモルドバ。非常事態宣言の発令は、エネルギー安全保障の脆弱性を露呈すると同時に、今後のエネルギー政策の転換を迫るものとなります。モルドバがどのようにこの困難を克服し、持続可能なエネルギー供給体制を構築していくのか、今後の動向が注目されます。