韓国経済の先行きに暗雲が立ち込めています。ウォン安ドル高が加速し、1ドル1400ウォン台が「ニューノーマル」として定着しつつあります。これは、1997年の通貨危機、2008年の世界金融危機、そして2022年のレゴランド事態と米国の利上げ時以来の出来事で、経済のファンダメンタルズへの懸念を強めています。
複合的な要因がウォン安を加速
今回のウォン安は、過去の危機とは異なり、複数の要因が複雑に絡み合っていることが特徴です。米中覇権競争や米国の政情不安といった外部要因に加え、韓国経済の柱である輸出の不振、そして大統領弾劾という政治的混乱といった内部要因も重なり、ウォン売りが加速しています。漢城大学経済学科のキム・サンボン教授は、「過去のウォン安は主に外部要因によるものだったが、今回は内部要因も大きく影響している点が大きく異なる」と指摘しています。
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外貨準備高と外国為替平衡基金の減少に懸念
韓国政府はウォン安への対応として、外貨準備高や外国為替平衡基金を活用して市場介入を行っていますが、これらの資金も減少傾向にあることが懸念材料となっています。韓国銀行によると、外貨準備高は2021年10月に過去最高の4692億1000万ドルを記録した後、減少を続けており、先月末には4153億9000万ドルとなっています。
外貨準備高4000億ドル割れの可能性も
外貨準備高4000億ドルは、韓国経済にとって「心理的マジノ線」とされており、これを下回ると外国人投資家の資本流出が加速する恐れがあります。延世大学経済学部のキム・ジョンシク名誉教授は、「4000億ドル割れは市場に大きな不安感を与える」と警鐘を鳴らしています。一方、企画財政部は「外貨準備高は世界9位の水準であり、韓国はドルの債権国であるため、過度な懸念は不要」との見解を示しています。
外国為替平衡基金の運用規模縮小も不安材料
為替相場の安定化を図るための外国為替平衡基金も、近年は税収不足を補填するために流用されており、運用規模が縮小しています。企画財政部は来年の運用規模を今年より64兆8000億ウォン少ない140兆3000億ウォンとする方針ですが、国会予算政策処は「外国為替平衡基金の活用には慎重な対応が必要」と指摘しています。
韓国経済の今後の見通しは不透明
ウォン安の進行は、輸入物価の上昇を通じてインフレを加速させる可能性があり、家計への負担を増大させることが懸念されます。また、企業の収益にも悪影響を及ぼす可能性があり、韓国経済の先行きは不透明感が増しています。今後の為替動向、政府の対応、そして世界経済の動向が、韓国経済の行方を左右する重要な要素となるでしょう。