アサド前シリア大統領が、ダマスカス陥落の5年以上前、巨額の資金をロシアへ空輸していたという衝撃的な報道が話題を呼んでいます。一体何が起こったのか、その真相と今後の行方を探ります。
2億5000万ドルの現金空輸作戦
フィナンシャル・タイムズ(FT)の報道によると、アサド政権は2018年から2019年にかけて、なんと2トンもの紙幣をモスクワへ空輸していたという記録が見つかりました。金額にして、現在のレートで約385億円に相当する2億5000万ドル。これは一体何のためだったのでしょうか?
アサド大統領(右)とプーチン大統領
シリア内戦において、アサド政権はロシアのプーチン大統領に大きく依存していました。ロシアはシリア領土内に軍事資産を保有しており、アサド大統領失脚後もこれらの資産確保を望んでいたと考えられます。巨額の資金空輸は、ロシアへの負債返済や資産確保のための工作資金だった可能性が指摘されています。
貿易データが裏付ける現金輸送の実態
アメリカの貿易データ専門企業インポート・ジーニアスのデータによると、2019年5月13日、1000万ドル相当の100ドル札を積んだ飛行機がモスクワのヴヌーコヴォ国際空港に着陸した記録が残っています。FT紙は、2018年3月から2019年9月にかけて、合計21回のフライトで2億5000万ドル以上が輸送されたと報じており、2018年以前には同様の記録はなかったとのこと。これは前代未聞の現金空輸作戦と言えるでしょう。
アサド前大統領の亡命と今後の展望
アサド前大統領は、ダマスカス陥落後にロシアへ亡命。亡命後初の声明で、反政府軍との戦闘継続を計画していたと主張しました。辞任や亡命は考えていなかったと述べていますが、その真意は定かではありません。
アメリカ国務省近東局の元次官補デイビッド・シェンカー氏は、アサド前大統領が贅沢な生活を続けるために資金を海外に送る必要があったとFT紙に語っています。シリア法的発展プログラム(SLDP)の上級研究員イヤド・ハミド氏も、ロシアが長年アサド前大統領の資金の避難先だったと指摘。これらの証言は、巨額資金空輸の背景をより深く理解する手がかりとなるでしょう。
国際社会の反応と責任追及の可能性
アサド一家は現在、ロシアで多くの不動産を所有し、生活を送っているとされています。今後、アサド政権による人権侵害に対する責任追及の動きが活発化することが予想されます。シエラレオネ特別法廷の元主任検察官デイビッド・クレーン氏は、シリア国民の怒りと正義の原則に基づき、信頼できる責任追及の仕組みを作る必要性を強調しています。
まとめ
アサド前大統領による巨額資金のロシアへの空輸は、シリア内戦の複雑な背景と権力闘争を浮き彫りにする出来事です。今後の国際社会の対応、そしてアサド前大統領の責任追及は、シリアの未来を左右する重要な要素となるでしょう。今後の動向に注目が集まります。