対馬の観音寺から盗難された仏像が、ついに日本へ返還される見通しとなりました。10年以上もの間、所有権を巡り日韓両国で争われてきた「観世音菩薩坐像」が、韓国中部・瑞山の浮石寺で法要の後、日本へ戻ってくることになります。
盗難から返還までの長い道のり
2012年、長崎県対馬市にある観音寺から「観世音菩薩坐像」が盗難され、韓国へ持ち去られました。その後、韓国の浮石寺がこの仏像の所有権を主張し、長きにわたる法廷闘争へと発展しました。
対馬の観音寺から盗難された「観世音菩薩坐像」(出典:時事通信社)
浮石寺、100日間の法要後返還を決定
浮石寺関係者によると、2025年3月から5月にかけて、約100日間の法要を執り行った後、仏像を日本へ返還する方針が固まりました。浮石寺は、仏像の安寧を祈る法要の実施を条件に返還には反対しない意向を示しており、観音寺側との協議を経て、法要開催の同意を得たとのことです。
法要は来年春に実施、冬の実施は断念
当初は今冬に法要を行うことも検討されていましたが、寺周辺の積雪による交通への影響を考慮し、来年春の実施となりました。浮石寺関係者は、「観音寺側は早期返還を希望していたが、冬季の積雪状況を鑑みて、来年春に法要を行うことになった」と説明しています。
観音寺への返還手続き
観音寺は、現在韓国検察が証拠品として保管している仏像の返還に必要な書類を提出する予定で、手続きが完了次第、仏像は浮石寺へ搬出され、法要の後、日本へ返還される見込みです。
観音寺の風景(イメージ画像)
文化財保護の専門家の見解
文化財保護の専門家である山田一郎氏(仮名)は、「今回の合意は、盗難文化財の返還における重要な一歩となるでしょう。日韓両国の協力関係が促進され、今後の文化財保護活動にも良い影響を与えることが期待されます」と述べています。
返還後の仏像の安置場所
返還後の仏像の安置場所については、観音寺と関係機関が協議を進めている段階です。盗難防止対策の強化など、安全な保管体制の構築が急務となっています。
この度の合意により、10年以上にわたる仏像返還問題についに終止符が打たれることになります。日韓両国間の文化交流の促進にも繋がるこの出来事は、今後の文化財保護の在り方についても重要な示唆を与えてくれるでしょう。