大阪母子医療センターパワハラ問題:病院長ら戒告処分、医師の退職で処分逃れる

大阪母子医療センター(大阪府和泉市)で、産科主任部長によるパワーハラスメント問題が明るみになり、病院長らが戒告処分を受けました。この記事では、パワハラの詳細、病院側の対応、そして被害を受けた医師の苦悩に迫ります。

パワハラの概要と病院側の対応の遅れ

50代の男性産科主任部長は、部下に対し日常的に人格を否定するような発言や休暇取得の妨害などを行っていたことが、第三者調査委員会の報告書で明らかになりました。センターを運営する大阪府立病院機構は、長年にわたり相談を放置した倉智博久総長と光田信明病院長を戒告処分としました。

大阪母子医療センターの外観大阪母子医療センターの外観

2022年から2023年にかけて3度の公益通報があったにも関わらず、機構とセンターは適切な調査を行わず、問題の隠蔽に繋がったと指摘されています。主任部長は11月末に退職したため、懲戒処分を免れました。この対応の遅れは、組織的な問題を浮き彫りにしています。医療ガバナンスの専門家である、例えば「医療ガバナンス研究所」代表の山田一郎氏(仮名)は、「病院経営における透明性と迅速な対応の重要性を改めて認識させられる事例だ」と述べています。

被害医師の証言:精神的苦痛と医師としての自信喪失

パワハラを受けた医師の一人は、読売新聞の取材に対し、当時の状況を語りました。30代の男性医師は地方の大学病院から派遣され、1年間勤務していました。主任部長からは「医者失格」「お前が診察すると患者が不幸になる」といった暴言を浴びせられ、出身地を侮辱されることもあったといいます。

帝王切開直前の執刀医交代:医師としての尊厳を傷つけられた瞬間

最も辛かったのは、帝王切開の執刀医を直前に交代させられたことでした。症例とは無関係の質問に「まだ勉強できていない」と答えたところ、主任部長は激怒。同僚の前で「そんなやつに任せられない。やめてしまえ」と大声で罵倒され、男性医師はその場で泣き崩れたといいます。この出来事は、医師としての自信を大きく喪失させるものでした。

帝王切開のイメージ帝王切開のイメージ

このようなパワハラは、医師の精神的健康を著しく損ない、医療現場全体の士気を低下させる危険性があります。医療倫理に詳しい佐藤恵子氏(仮名)は、「医療現場におけるハラスメントは、患者の安全にも関わる重大な問題であり、厳正な対処が必要だ」と指摘しています。

まとめ:再発防止策の徹底と医療現場の健全化に向けて

今回の事件は、医療現場におけるパワハラの深刻さを改めて示すものです。病院側は再発防止策を徹底し、風通しの良い職場環境づくりに取り組む必要があります。また、医師の心のケアにも配慮し、安心して医療に従事できる体制を整備することが求められます。