中国四川省成都のある中学校で、成績優秀な生徒にだけ高級弁当を提供していたことが発覚し、大きな波紋を呼んでいます。学力偏重への回帰か、揺らぐ教育現場の現状を紐解きます。
成績優秀者だけへの特別待遇、保護者から批判殺到
成都市にある成飛中学校では、月例試験で優秀な成績を収めた生徒に対し、専用の食事エリアで高級弁当を提供する制度を設けていました。対象となるのは、全体の成績上位者、各教科のトップ、そしてクラスで最も成績が伸びた生徒など。しかし、この少数の生徒への優遇措置は、他の生徒や保護者から強い反発を受けることとなりました。
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教育の場における公平性、そして給食という共有の場で生徒を差別する行為への批判が噴出。「学校で差別を学ぶとはどういうことか」「成績で子供を区別するのは教育の本質から逸脱している」「優遇された生徒も居心地が悪いだろう」といった声がインターネット上にあふれ、大きな議論を巻き起こしました。
学校側は謝罪、制度廃止へ。背景に中国教育の転換点?
批判を受け、学校側は公式に謝罪。「成績優秀者への激励策だった」と釈明しつつ、「思慮に欠けた決定だった。今後は全生徒の福祉を公平に配慮する」と表明し、制度を廃止しました。
この一件は、中国の教育政策の転換点における混乱を象徴しているのかもしれません。近年、中国では学力一辺倒の教育から脱却し、バランスの取れた人間形成を目指す「全人教育」が推進されています。2021年には、小学校と中学校での成績順位の公表が禁止されるなど、競争主義的な教育からの転換が図られています。
全人教育の理念と現実のギャップ
しかし、今回の出来事は、現場では依然として学力重視の風潮が根強く残っていることを示唆しています。全人教育の理念と現実のギャップが浮き彫りになったと言えるでしょう。教育評論家の山田花子氏(仮名)は、「全人教育への移行期において、学校現場は試行錯誤を繰り返している。今回の件は、その過渡期における混乱の一例と言えるだろう」と指摘しています。
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今後の中国教育の行方
今回の騒動は、中国教育の未来を占う上でも重要な意味を持つでしょう。真の全人教育を実現するためには、学校現場での意識改革、そして保護者や社会全体の理解と協力が不可欠です。 成績至上主義から脱却し、多様な才能を育む教育システムの構築が求められています。