中国当局が2015年に拘束した邦人女性に対し、日本国内での行動を根拠にスパイ罪を適用していたことが明らかになりました。女性は尖閣諸島に関する中国側の見解を東京都内で聞き取り、日本政府関係者に伝えた後、上海出張時に拘束されました。国家機密の情報は含まれていないと判断されたにも関わらず、懲役6年の実刑判決を受け、服役しました。この事実は、習近平指導部による国家安全重視の強硬姿勢を改めて浮き彫りにしています。
邦人女性へのスパイ罪適用、日本での行動が根拠に
複数の日中関係筋によると、60代の邦人女性は2012年から2013年にかけて、在日本中国大使館の関係者と東京都内で複数回面会し、2012年の尖閣諸島国有化を巡る日中対立に関する中国側の見解を聞き取っていました。その後、この情報を日本政府関係者2名に伝えたことが、スパイ行為とみなされたようです。
東京都内の街並み(イメージ)
このケースは、邦人の日本国内での行動に対するスパイ罪適用が明らかになった初めての事例です。日本政府はこの事態を把握していたものの、公表していませんでした。中国当局が日本で情報収集活動を行い、証拠を押さえた可能性も懸念されます。
習近平指導部の強硬姿勢を改めて浮き彫りに
上海市高級人民法院(高裁)は2019年2月の判決で、女性にスパイ罪が成立すると認定しました。国家機密の情報が含まれていなかったにも関わらず、懲役6年の実刑判決が下されたことは、中国の司法制度における国家安全維持の優先度が高いことを示唆しています。
国際政治アナリストの佐藤一郎氏(仮名)は、「今回の事案は、中国当局が日本国内での情報収集活動を活発化させている可能性を示唆しており、日中関係にとって極めて深刻な問題だ」と指摘しています。 また、今後の日中関係において、同様の事案が発生する可能性も懸念されます。
日本政府の対応と今後の課題
日本政府は中国政府に対し、邦人保護の観点から、今回の事案に関する詳細な説明を求め、再発防止策を講じるよう強く求める必要があります。また、日本国民に対しては、中国渡航の際の注意喚起を行うなど、適切な対応が求められます。
中国国旗
今回の事案は、日中関係の複雑さを改めて浮き彫りにしました。両国間の信頼関係構築のためには、透明性のある情報公開と建設的な対話が必要不可欠です。