ガスプロムバンク制裁、ロシア経済への影響は?専門家に聞く

ロシアの主要銀行の一つ、ガスプロムバンクへの制裁がついに発動されました。このニュースは世界経済を揺るがし、多くの人々がその影響に注目しています。今回は、ロシア経済の専門家である北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターの服部倫卓教授(仮名)に、この制裁がロシア経済に及ぼす影響、そしてロシアの戦時経済の弱点について詳しく伺いました。

ガスプロムバンク制裁の重要性

アメリカ財務省は2024年11月、ガスプロムバンクを含む複数のロシア金融機関への制裁を発表しました。ガスプロムバンクは、ロシアの天然ガス独占企業ガスプロムの子会社であり、ロシアにとって重要な金融機関です。なぜこの銀行への制裁が重要なのでしょうか?

服部教授は、「ガスプロムバンクは、ロシアからの天然ガス輸入に対する決済窓口として指定されています。しかし、ガス代金の決済以外にも、軍人への報酬支払いや軍事関連の決済ルートにも利用されているとの批判があり、ウクライナをはじめとする国々は対策を求めてきました。2022年のウクライナ侵攻以降、ロシアへの外貨収入の半分以上がガスプロムバンク経由だったと言われています。」と説明します。この銀行への制裁は、ロシアの資金源を断つ上で非常に重要な意味を持つのです。

altaltサンクトペテルブルク国際経済フォーラム会場で表示されたガスプロムバンクのロゴ。ロシア経済における同銀行の重要性を象徴しています。

制裁発動の背景と今後の見通し

なぜアメリカ政府は今になって制裁に踏み切ったのでしょうか?

服部教授によると、これまでアメリカは制裁に慎重な姿勢を見せていました。ロシアからヨーロッパへのガス輸出は、制裁後もハンガリー、スロバキア、オーストリアなど一部の国で継続されており、ガスプロムバンクへの制裁はこれらの国の決済に支障をきたす可能性があったためです。

しかし、ウクライナ経由のパイプラインの利用契約が今年末で満了し、ウクライナが契約延長を拒否する姿勢を見せていることから、ロシア産ガスの輸入が困難になることが予想されます。そのため、アメリカは制裁による影響は限定的だと判断した可能性があります。

altaltウクライナからヨーロッパへと繋がる天然ガスパイプライン。このパイプラインの契約満了は、ガスプロムバンク制裁発動の背景の一つと考えられています。

また、2025年1月に予定されているトランプ新政権への移行前に、バイデン政権が制裁を急いだ可能性も指摘されています。

ハンガリーやEUは、ガス決済を制裁対象外とするよう要請しており、今後何らかの代替ルートが見つかる可能性も残されています。

ロシア経済への影響と今後の課題

ガスプロムバンクへの制裁は、ロシア経済に大きな打撃を与える可能性があります。しかし、ロシアはこれまでにも様々な制裁を乗り越えてきており、今回も何らかの対策を講じてくることが予想されます。

今後の焦点は、ロシアがどのように制裁の影響を最小限に抑え、経済活動を維持していくか、そして国際社会がどのように連携して制裁の効果を高めていくか、という点にあります。

服部教授は、「ロシア経済の今後の動向を注視していく必要がある」と強調しています。 世界経済の安定のためにも、ロシア情勢の推移を注意深く見守っていくことが重要です。