いよいよ2025年がスタートした。わが国では古来、年始に「餅」を食べる習慣がある。つきたての餅をきなこや小豆餡や大根おろしで食べたり、雑煮や汁粉(ぜんざい)にしたり、焼いて醤油をつけて海苔を巻いたりと、楽しみにしている人も多いだろう。
【画像】東京都内で餅の事故で搬送された人の数(2019年~2023年)(出典:東京消防庁)
他方で、例年高齢者を中心に「餅」を食べてのどに詰まらせる事故が後を絶たない。最悪の場合、窒息して亡くなるケースもある。お祝いの食べ物であるはずの餅が、一つ間違えると大きな事故につながりかねない。
餅の事故を未然に防ぐためにはどうすればよいのか。また、事故が起きてしまった場合、どのような応急処置をすればいいのか。東京消防庁に聞いた。
東京消防庁管内(稲城市および島しょ地区を除く地域)では“餅の事故”で少なくとも5人が死亡
実際に、餅をのどに詰まらせる事故の発生状況はどうなっているのか。
東京消防庁によると、都内で2023年に餅(団子等を含む)が原因で救急搬送されたのは64人、そのうち9割を超える58人を65歳以上の高齢者が占める。また、救急搬送時の初診時の程度別では以下の通り。
・軽傷:20人
・中等症:11人
・重症:6人
・重篤:22人
・死亡:5人
このうち、1月の発生状況はどうなっているのか。
「月別でみると、最多はやはり1月で21人。特に1日~3日の『三が日』に9人、月7日までに17名が救急搬送されています」(東京消防庁防災安全課 担当者)
餅の事故が1月、それも上旬に多発していることが、データからも裏付けられている。もちろん、救急搬送された件数はごく一部であることが想定され、実際にはこれよりも多くの事故が発生している。年始に餅を味わう習慣のあるすべての人にとって、決して「他人事」ではない。
餅の事故を防ぐための注意点
餅をのどに詰まらせる事故を未然に防ぐにはどうすればよいのか。東京消防庁防災安全課の担当者は、調理する側も、食べる側も、以下の5つのポイントに留意することが大切だと強調する。
①餅は小さく切って、食べやすい大きさにする
②急いで飲み込まず、ゆっくりと噛んでから飲み込む
③乳幼児や高齢者と一緒に食事をする際は、食事の様子を見守るなど注意を払う
④餅を食べる前に、お茶や汁物を飲んでのどを潤しておく
⑤いざという時に備え、応急手当の方法をよく理解しておく
雑煮や汁粉(ぜんざい)は、大きな餅が入っているほうが嬉しく、また、食べるときに餅がよく伸びるのが楽しみ、醍醐味だという人も多い。しかし、安全確保の観点からは、残念ながら、予め小さく切っておくことが望ましい。
また、餅は柔らかいので、つい、よく噛まないままに飲み込んでしまいがちである。食べるときはその都度、よく噛むように注意喚起をすることも重要だろう。