ロシアがシリアのアサド大統領の影響力低下を受け、リビアの砂漠地帯にあるアルカディム空軍基地への航空機の派遣を増加させていることが、CNNの分析で明らかになりました。この動きは、地中海における軍事プレゼンスの維持とアフリカへの影響力拡大を目的とした戦略転換を示唆している可能性があります。
シリアからの撤退とリビアへの移動
CNNが分析した飛行追跡データによると、12月中旬以降、ロシアの大型輸送機アントノフ124やイリューシン76が、シリアのフメイミム空軍基地からリビア東部ベンガジ近郊のアルカディム空軍基地へ頻繁に飛行していることが確認されています。欧米当局者によれば、ロシアはシリアから軍装備品や兵員の大規模撤収を開始しており、その中には先進的な防空システムも含まれている可能性が指摘されています。
リビアのアルカディム航空基地の衛星画像
英王立防衛安全保障研究所(RUSI)のジャレル・ハルチャウイ氏は、ここ数週間でシリア、ロシア、ベラルーシからリビアへのロシア航空機の飛来が急増していると指摘しています。
アフリカ戦略におけるリビアの重要性
フメイミム空軍基地は、これまで中央アフリカ共和国、スーダン、リビア、マリ、ブルキナファソなどアフリカ諸国で活動するロシアの民間軍事会社ワグネルの拠点となっていました。ハルチャウイ氏によれば、ロシアはリビアでのプレゼンス強化によって、アサド大統領の影響力低下による損失を埋め合わせ、サハラ以南のアフリカ地域における影響力拡大を図っている可能性があります。
位置情報が確認された動画には、アルカディム基地を経由したロシアの航空機がマリの首都バマコに向かう様子が捉えられています。マリでは近年、ロシアがフランスに代わって影響力を強めています。
リビア:新たな戦略拠点
アメリカン・エンタープライズ公共政策研究所のアナリストは、ロシアがリビアを経由してバマコに航空機を派遣したことは、シリアの代替拠点としてリビアを重視していることを示唆していると分析しています。 この動きは、ロシア国防省傘下の「アフリカ部隊」による従来のバマコへの巡回パターンとは異なるものであり、ロシアの戦略転換を示唆している可能性があります。
リビアのアルカディム航空基地の別の衛星画像
専門家の中には、ロシアがリビアを拠点に地中海における軍事プレゼンスを維持し、アフリカへの影響力を拡大しようとしているとの見方も出ています。リビアの政情不安定化が懸念される中、ロシアの動向は国際社会の注目を集めています。今後の動向を注視していく必要があります。