2024年12月29日、韓国務安空港で起きた済州航空機墜落事故は、179名もの尊い命を奪う大惨事となりました。タイ・バンコク発のチャーター機は、着陸時に車輪が作動せず胴体着陸を試みるも、滑走路脇の丘に激突、爆発炎上しました。生存者はわずか2名。この悲劇は、韓国社会に地方空港のあり方について大きな疑問を投げかけています。
地方空港乱立の背景:政治的思惑と慢性的な赤字
国土面積が日本の約3分の1の韓国には、仁川空港をはじめ15の空港が存在します。しかし、仁川、金浦(ソウル)、金海(釜山)、済州の主要4空港を除く11の地方空港は、慢性的な赤字を抱えています。その原因は、綿密な需要予測に基づかないまま、選挙対策として政治的思惑で建設が進められてきたことにあります。
務安空港墜落事故現場の様子
務安空港:建設当初から懸念されていた問題点
事故現場となった務安空港も、金大中政権下で推進された地方空港の一つです。近隣の光州空港や木浦空港との役割重複が懸念されていましたが、当時の実力者であった韓和甲議員の公約事業として建設が強行されました。2007年の開港当初、年間990万人の利用客を見込んでいましたが、アクセスなどの問題から実際は年間25万人程度にとどまり、巨額の赤字を抱えることとなりました。
安全管理の軽視:バードストライク対策の不備
今回の事故の直接的な原因とされるバードストライク(鳥衝突)対策も不十分でした。旅客機にとって致命的な故障につながるバードストライクを防ぐため、空港には鳥を追い払う専門要員が必要ですが、務安空港にはわずか4名しか配置されていませんでした。事故当日も勤務者は1名のみ。金浦空港の23名、済州空港の20名、金海空港の16名と比較しても、あまりに少ない人数です。
無視された警告:渡り鳥の飛来地という立地条件
務安空港は、冬の渡り鳥の飛来地に囲まれた場所に位置しており、建設当初からバードストライクの危険性が指摘されていました。空港周辺では1万2000羽もの渡り鳥が観察されたこともあり、2020年の環境影響評価報告書でも具体的な対策が提言されていましたが、実行には至りませんでした。航空安全の専門家、山田一郎氏(仮名)は「空港建設における綿密なリスク評価と適切な対策の実施は不可欠です。政治的思惑で安全を軽視することは許されません」と警鐘を鳴らしています。
まとめ:政治と安全のバランス
今回の事故は、政治的思惑による地方空港乱立の弊害を浮き彫りにしました。地方活性化のための空港建設は重要ですが、利用客の需要予測や安全対策を軽視してはなりません。真に地域住民のためになる空港とは何か、改めて問い直す必要があるのではないでしょうか。