白馬村、近年外国人観光客から熱い視線を浴びる長野県の山岳リゾート地。TSMC進出で沸く熊本県に次ぐ地価上昇率を記録し、「第二のニセコ」とも称されるこの村の魅力を探ります。今回は、白馬村外国人協会代表であり、宿泊事業を営むアメリカ人、イアン・ミラー氏に、外国人観光客が白馬村に惹かれる理由を伺いました。
白馬との出会い:クールな日本人スノーボーダーとの邂逅
マウントフッドで感じた日本の魅力
ミラー氏は、アメリカ・オレゴン州のマウントフッド近郊で育ちました。一年を通してウィンタースポーツが楽しめるこの地で、90年代中盤、彼は日本人スノーボーダーと出会います。当時、彼らは裕福で、スノーボードの腕前も抜群。「なんてカッコいい人たちなんだ!」と衝撃を受けたミラー少年は、日本語を学ぶことで良い仕事に就けるのではと考え、日本への興味を抱き始めました。
白馬村のスキー場
大学留学から白馬での起業へ
日本への想いを募らせたミラー氏は、大学時代に日本へ留学。そのまま外資系証券会社に就職し、東京で働く中で白馬村を訪れます。東京からのアクセスの良さ、広大なスキー場、そして質の高い雪に魅了された彼は、白馬でビジネスを始めることを決意。貸別荘の購入を皮切りに、ホテル事業へと展開していきました。それは約10年前のことでした。
なぜ白馬を選ぶのか?:外国人観光客急増の背景
9.11の影響と口コミ効果
2000年代初頭、日本のスキー場に訪れる白人観光客が急増しました。その背景には、2001年のアメリカ同時多発テロ事件の影響があるとミラー氏は指摘します。テロの恐怖から海外旅行を控えていたオーストラリア人にとって、時差が少なく安全な日本が魅力的な旅行先として浮上。口コミで日本の雪質と快適さが広まり、白馬村は東京からのアクセスの良さも相まって、多くの外国人観光客を惹きつけました。
北米スキーリゾートの高騰と日本の魅力
もう一つの要因は、北米のウィンターレジャー施設における物価高騰です。ウィスラーやレイクタホなど、世界的に有名なスキー場を民間企業が独占的に運営するようになり、価格が急騰。リフト券だけで3万円、レッスンや飲食を含めると1日20万円にも及ぶ高額な費用は、家族連れや若者グループにとって大きな負担となります。
スキーをする人々
オーストラリア国内のスキー場も北米と同様に物価が上昇する中、良質なパウダースノーを安定的に提供し、かつ安全で安価な日本のスキー場は、外国人にとって非常に魅力的な選択肢となっているのです。「世界のスキー場の多くはアイスバーンであったり、人工雪に頼っている」とミラー氏は言います。
白馬村の未来:持続可能な観光を目指して
白馬村は、高騰する北米スキーリゾートとは対照的に、質の高い雪と手頃な価格で外国人観光客を魅了しています。安全で快適な環境も、人気の理由の一つと言えるでしょう。今後の白馬村は、外国人観光客の増加による経済効果を享受しつつ、持続可能な観光モデルを構築していくことが重要となるでしょう。