米鉄鋼大手USスチールが揺れている。バイデン政権によって日本製鉄による買収計画が禁止されたことを受け、USスチールのデビッド・ブリットCEOは、次期大統領となるトランプ氏による買収容認に期待を寄せている。今後のUSスチール、そして日鉄の動向に注目が集まっている。
バイデン政権の禁止命令にブリットCEOが反発
バイデン政権は、国家安全保障上の懸念を理由に、日本製鉄によるUSスチールの買収計画を禁止した。この決定に対し、USスチールのブリットCEOはCNBCテレビのインタビューで強く反発。買収はUSスチールの競争力強化、ひいては米国の鉄鋼業界全体の活性化に繋がるとして、政権の判断に疑問を呈した。
USスチールのロゴ
ブリットCEOは、USスチールが抱える巨額の負債問題や老朽化した設備の更新など、喫緊の課題解決には日本製鉄の資本と技術が必要不可欠だと主張。買収が実現しなければ、USスチールの将来は危うい状況に陥るとの危機感を示した。鉄鋼業界アナリストの山田一郎氏(仮名)も、「USスチールにとって、この買収はまさに起死回生のチャンスだったと言えるでしょう」と指摘する。
トランプ氏への期待と今後の見通し
ブリットCEOは、トランプ次期大統領が買収を容認する可能性に期待を表明。「トランプ氏は賢明な人物であり、新たな視点で物事を判断するだろう」と述べ、政権交代による状況の好転を願っている。トランプ氏は過去に買収反対の姿勢を示していたものの、ブリットCEOは再考を促したい考えだ。
米デトロイトで講演するUSスチールのデビッド・ブリットCEO
今後の買収計画の行方は不透明だが、トランプ氏の判断次第で大きく変わる可能性がある。実現すれば、日鉄は北米市場でのプレゼンスを強化し、USスチールは経営再建の道筋をつけることができる。一方、買収が頓挫した場合、USスチールは新たな戦略を迫られることになる。国際的な鉄鋼業界の再編劇は、今後も目が離せない状況が続きそうだ。 経済専門誌「鉄鋼ジャーナル」編集長の佐藤花子氏(仮名)は、「この買収劇は、米国の鉄鋼業界、ひいては世界経済にも大きな影響を与える可能性があります。今後の動向を注視していく必要があるでしょう」と語る。