生活保護は、経済的に困窮する人々にとって最後の砦となる重要な制度です。しかし、この制度を取り巻く現状は、誤解や偏見に満ち溢れています。「不正受給」という言葉が独り歩きし、制度全体のイメージを歪めている側面も否めません。この記事では、生活保護の不正受給の実態について、データに基づいて解説し、よくある誤解を解き明かしていきます。また、行政書士として1万件以上の生活保護申請をサポートしてきた三木ひとみ氏の経験に基づく事例も紹介し、より深く理解を促します。
不正受給の割合は?:数字のマジックに騙されないために
厚生労働省の資料によると、2022年度の生活保護における不正受給額は約106億円。一見大きな金額に感じますが、全体の保護費負担金と比較すると、その割合はわずか0.4%未満です。数字だけを見ると、不正受給は微々たるものと捉えがちですが、本当にそうでしょうか? 実は、この数字には多くの落とし穴が潜んでいます。
制度の不備と理解不足:真の不正受給はどこに?
生活保護の不正受給に関するグラフ
不正受給の内訳を見ると、「稼働収入の申告漏れ」と「過小申告」が全体の約61%を占めています。しかし、三木氏の実務経験に基づくと、申告ルールの理解不足が原因であるケースも少なくありません。生活保護制度の複雑さや、申請者の経済状況・生活環境によっては、正確な申告が困難な場合もあるのです。
また、自治体側の対応にも問題があります。申請時の資産調査が不十分であったために、結果的に不正受給と判断されるケースも存在します。業務多忙などを理由に、本来行うべき調査を怠ってしまうことは、制度の信頼性を揺るがす大きな問題と言えるでしょう。
事例に見る不正受給の複雑さ:70代夫婦と娘のケース
三木氏は、70代の夫婦と娘のケースを例に挙げ、不正受給問題の複雑さを指摘しています。(詳細は書籍『わたし生活保護を受けられますか 2024年改訂版』を参照) 生活保護を取り巻く状況は、一概に「不正」と決めつけるには難しい側面があるのです。
誤解と偏見を乗り越えて:生活保護の未来を考える
生活保護のイメージ写真
インターネット上には、真偽不明の「不正受給」情報が溢れています。しかし、それらの情報は、裏付けに乏しく、実態を正確に反映しているとは言えません。 生活保護は、社会のセーフティネットとして重要な役割を担っています。制度の改善と共に、私たち一人ひとりが正しい知識を持ち、偏見をなくしていくことが、真に困窮する人々を支えることに繋がるのではないでしょうか。