米国経済の堅調さを背景に、2024年初頭から世界的な投資銀行がアメリカの利下げシナリオを修正し始めています。雇用と物価の予想以上の好調さを受け、金融緩和の必要性が薄れているためです。むしろインフレ懸念の再燃から、利上げの可能性も出てきています。 果たして、アメリカの高金利政策継続は日本経済にどのような影響をもたらすのでしょうか?
アメリカ利下げ観測の後退:主要投資銀行の見通し変更
国際金融センターによると、バンク・オブ・アメリカ(BoA)は「米国の利下げサイクルは先月に終わり、むしろ引き上げに傾いた」と予測。昨年までの年内少なくとも2回の利下げ予想を修正しました。BoAの予測通りなら、アメリカは年4.5%以上の高金利時代が続き、日米金利差はさらに拡大する可能性があります。
アメリカの金利推移グラフ
ゴールドマン・サックスやJPモルガンも、今年の米国の利下げ回数見通しを下方修正。バークレイズも利下げ回数を減らし、時期も遅らせました。
雇用と物価の好調:利下げシナリオ修正の背景
シナリオ修正の背景には、FRBが重視する「物価と成長(雇用)」の好調さがあります。先月の米国の非農業部門雇用者数は市場予想を大きく上回り、昨年3月以降で最大の増加幅を記録。BoAは「力強い労働市場を考慮すると、FRBが追加利下げを行う理由はほとんどない」と分析しています。
サービス価格指数の上昇:インフレ再燃の兆し
米国供給管理協会によると、サービス業価格指数は2年余りで最高水準に。19のサービス業種のうち15業種で費用(物価)が上昇したことが影響しています。市場の注目は、近日発表される消費者物価指数(CPI)に集まっています。専門家らは、CPIの増加幅が3ヶ月連続で拡大すると予想。BoAは「労働市場の堅調さと長期インフレ期待の定着により、FRBが利上げに踏み切る可能性もある」と見ています。
FRB委員のタカ派発言:利上げ観測を後押し
FRB委員からもタカ派的な発言が相次いでいます。ミシェル・ボウマン理事は、追加利下げは中断する必要があるとの立場を表明。「コアインフレがFRBの目標である2%を上回っており、鈍化傾向の進展も昨年は止まった」と指摘し、慎重な金融政策運営の必要性を強調しました。
市場予測:利上げの可能性は低いものの予断を許さない状況
市場では、米国が今年最初の金融政策会議で政策金利を据え置くと予想されています。シカゴ商品取引所(CME)のFedWatchによると、次回FOMCでFRBが金利を据え置く確率は97%を超えています。しかし、雇用と物価の動向次第では、利上げの可能性も排除できない状況です。
日本経済への影響:円安と輸出企業への恩恵、輸入物価上昇のリスク
アメリカの高金利政策継続は、日米金利差の拡大を通じて円安圧力につながる可能性があります。これは輸出企業にとってはプラス材料となる一方、輸入物価の上昇を通じて家計や企業の負担を増大させるリスクも孕んでいます。今後のアメリカの金融政策の行方、そしてそれが日本経済に及ぼす影響に注目が集まります。