日本列島は記録的な猛暑に見舞われています。特に今年は梅雨明けが早く、多くの地域で平年を大きく上回る暑さが続いています。神奈川県横浜市のみなとみらい地区では、温暖化の影響とみられる大量のクラゲが発生するなど、環境異変も報告されています。専門家は現在の状況を「地球沸騰化」の時代の到来を示すものと警告しており、その背景にある異常気象や今後の影響について解説します。
日本各地を襲う記録的暑さと環境異変
今年も多くの地域で耐えがたい暑さが続いています。気象庁によると、6月30日には全国914の観測地点のうち118地点で猛暑日(気温35℃以上)を記録しました。これは観測地点の約13%にあたります。特に東京都心では、6月の真夏日(気温30℃以上)が過去最多の13日となり、平年を大きく上回るペースで危険な暑さが増しています。
神奈川県横浜市の「みなとみらい地区」では、今年6月中旬に海面を覆い尽くすほどのクラゲが大量発生しました。これは、温暖化による海水温の上昇でクラゲの餌となるプランクトンが増えたことが原因とみられています。近隣に住む60代の男性からは、数年前から夏になると横浜の河口でクラゲが発生しており、その頻度が年々増加しているように感じるとの声が聞かれ、異常気象との関連性が指摘されています。
横浜みなとみらいの海面を覆い尽くすほど大量発生したクラゲ
「トリプル高気圧」と「ヒートドーム現象」のメカニズム
現在の日本列島を覆う異常な暑さは、「ヒートドーム現象」が原因の一つとみられています。これは、高気圧による下降気流が、高温の空気を地上に押し下げて閉じ込めることで発生する現象です。気象予報士の森田正光氏は、日本の夏の暑さに大きく関わる太平洋高気圧が、南方海域での高い海水温により蒸発した空気で強まっていると解説します。太平洋高気圧の勢力が強いため、本来なら南に位置する梅雨前線が北へ押しやられ、梅雨明けが早まり、高温の空気が日本列島に閉じ込められやすくなっています。
さらに、異常気象に詳しい三重大学の立花義裕教授は、日本をヒートドーム化させているのは太平洋高気圧だけではないと指摘します。中国西部から偏西風に乗って流れてくるチベット高気圧と、北海道の北から張り出す南北傾斜高気圧も同時に非常に強力に作用しており、これら三つの高気圧が組み合わさることで「トリプル高気圧」となり、6月にもかかわらず記録的な猛暑をもたらしているといいます。この状況は続き、例年以上の猛烈な暑さは8月まで続くと予測されています。
未来予測される「40℃超え日常化」と社会への影響
立花教授は、温暖化がさらに進行すれば、日本では40℃を超える日が夏の日常となり、45℃に達する可能性さえあると警告します。日本は周囲を海に囲まれているため湿度が高く、同じ40℃でも乾燥した内陸の国より体感温度がはるかに高くなるため、不快感と危険性が増します。
この殺人的な暑さは既に健康被害をもたらしています。総務省消防庁のデータによると、6月16日からの1週間だけで全国で8603人が熱中症で救急搬送されました。これは前週から7637人の大幅な増加です。熱中症による直接的な死者は年間1000人ほどといわれますが、酷暑が心臓や脳などの機能低下を引き起こし、関連死を含めると年間数千人が猛暑により命を落としている可能性があると指摘されています。
また、異常な暑さが続けば、主食である米などの農作物が育ちにくくなり、食料自給率の低い日本はたちまち食料不足の危機に直面します。立花教授は、これを国家としての危機的状況であり、戦争が起きている時と同じだと警鐘を鳴らしています。
異常気象の一例、豪雨により腰まで水に浸かったインド北東部の街並み
世界に広がる灼熱と「地球沸騰化」への警告
殺人的な猛暑に苦しめられているのは、日本だけではありません。ヨーロッパでも記録的な暑さが観測されています。ポルトガルでは6月29日に、同月としては過去最高の46.6℃を記録しました。フランスでは人命が危ぶまれるとして96県中84県で高温警報が出され、ドイツではライン川の水位が低下し、貨物輸送に支障が出てしまいました。
こうした世界的な異常気象に対し、国連の事務総長であるアントニオ・グテーレス氏は、2023年7月の記者会見で人類へ強い警告を発しました。「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰化の時代が来たのです」と述べ、化石燃料からの利益追求をやめ、すべての国が焼けつく暑さ、呼吸ができないほどの高温、命を脅かす洪水、干ばつ、猛火から国民を守るべきだと強く訴えました。国連の試算では、「地球沸騰化」による災害で全世界で年間50万人が死亡し、27億人が命の危機に晒される可能性があるとされています。
前例のない灼熱の日々は、既に現実のものとなっています。日本国内での記録的猛暑、健康被害、食料安全保障の懸念、そして世界各地での異常気象は、「地球沸騰化」がもたらす深刻な影響を示しています。アントニオ・グテーレス国連事務総長が警告するように、この破局的な事態を回避するために残された時間は、そう多くないのかもしれません。
参照元: FRIDAYデジタル (via Yahoo!ニュース)