JR東日本は羽田空港アクセス線、東山手ラインを2031年度に開業する予定である。この路線は田町駅で分岐し、羽田空港と東京駅、上野駅などを直結することで、羽田空港へのアクセスが劇的に向上する見込みである。しかし、この新路線の開業により、同じJR東日本傘下にある東京モノレールに最も大きな影響が及ぶと考えられる。鐵坊主・著『鉄道路線に翻弄される地域社会―「あの計画」はどうなったのか?―』では、東京モノレールの羽田空港アクセス線開業後の将来について考察している。本書より一部を抜粋してお届けする。
羽田空港アクセス線と完全に競合する?
東京モノレールは浜松町駅と羽田空港を結んでおり、山手線と接続して東京駅や上野駅へのアクセスが可能である。同じ鉄道事業者であれば、京浜急行電鉄が競合となっているが、こちらは品川駅をターミナルとしており、山手線を経由して新宿駅や渋谷駅に通じている。このように、現状、東京モノレールが都心部の東北エリア、京急が南西エリアと一定の棲み分けができている。
しかし、羽田空港アクセス線が開通すれば、この棲み分けの構図が完全に壊れる。羽田アクセス線は山手線の田町駅北側で分岐し、羽田空港の地下に直通する。現在のところ、途中駅は設けられない予定だ。そして、この路線に乗り入れるのは上野東京ラインと考えられており、東京駅や上野駅から羽田空港へ直通できるようになる。そうなれば、現在、東京駅や上野駅から羽田空港への主要アクセスとなっている東京モノレールが所要時間で大きく劣ることになり、利用者数減少は避けられないだろう。
しかし、東京モノレールの親会社は他ならぬJR東日本である。JR東日本によると、「羽田空港アクセス線の開業により、モノレールへの影響は少なからずあるだろうが、沿線には住宅や企業が増え、空港利用客以外に、通勤の足としての役割も高まってきている」と説明し、両社は共存していけるとの見方を示しているが、果たしてそうなのだろうか?