【石戸諭氏】ラグビー場に旭日旗はいらない[10/23]
アイルランドの歴史をひもとけば、伝統国かつ世界有数の強豪でありながら、ワールドカップでの戦績はベスト8止まりといつも物足りないものだった。そんな状況を打破すべく、ニュージーランドからシュミットを招聘し、世界ランキングを2位まで上げて今大会を迎えた。公式ガイドブックは「誰もが羨む層の厚さを誇る『グリーンマシーン』が、上位進出を逃すとしたら驚きだ」とまで書いている。
そんななかで敗戦してもなお、シュミットは勝者をたたえることから会見を始めた。現実を受け止め、誰かをおとしめることは絶対にしない。彼の行動はラグビー憲章に掲げられた5つの言葉──品位、情熱、結束、規律、尊重──を体現したものだ。具体化させる行動が伴わなければ、精神は容易に死文化する。
この精神は、観客席にも見受けられる。まずサッカーや野球のようにホームとアウェイで客席が分かれていない。日本-アイルランド戦が開かれた静岡のエコパスタジアムでも、緑の集団と赤と白のジャージを着た集団は入り交じって歓声を送っていた。良いプレーには応援チームに関係なく、試合が終われば勝者には惜しみなく、敗者にも感謝を込めて拍手を送るのがラグビーファン、世界共通のマナーである。
シュミットが激賞したように今大会、日本代表の活躍は目を見張るものがある。アイルランドだけでなく、伝統国かつ強豪国を意味する「ティア1」のスコットランドを28対21で破り、予選プール最終戦で初のベスト8進出を決めた。前半25分に堀江翔太、ジェームス・ムーア、ウィリアム・トゥポウと連続してオフロードパスをつなぎ、最後に稲垣啓太が鮮やかなトライを決めた瞬間のことだ。記者席で、隣のテーブルに座っていた外国メディアの男性記者が思わず立ち上がり、歓声とともに両手を高々と上げ拍手を送っていた。
別の試合だったが、会見で「今大会はオールブラックスより、ジャパンの試合を見たがっている人が多い」という記者の声もあった。結果だけでなく試合内容も、伝統国の目の肥えたメディアを魅了するものだった。
日本大会が成功した証左
スコットランド戦は、試合前日に直撃した台風19号の被害が拡大するなかでのゲームでもあった。開始前には時間とともに増え続ける被災者、被災地への黙禱がささげられた。会場の横浜国際総合競技場が敷地内にある新横浜公園は鶴見川流域の多目的遊水地であり、洪水被害を低減させる機能を担っている。何事もなかったかのように開かれた試合の裏側には、ボランティアを含め名前の出てこない関係者の尽力があった。これも多くの称賛を集めた。
日本代表ヘッドコーチのジェイミー・ジョセフは試合当日、台風被害を選手たちに伝えたという。キャプテンのリーチマイケルが言うように「この試合は私たちだけのものじゃないと、選手たちは思っていた」のである。
今大会で日本代表は、誰もが描くことができない、想像以上のドラマの主役となった。日本中がラグビーに熱狂し、大会開始前の静寂が嘘のようなお祭り騒ぎが起きた。スコットランド戦のテレビ視聴率は瞬間最高で53.7%に達し、電車の中、飲食店、あるいは会社で人々がラグビーを話題に挙げる。これ自体は、紛れもなく日本開催が成功した証左と言えるだろう。
旭日旗が振られてきた「文脈」
成功と同時に、ラグビー憲章の精神に関わる課題が浮かび上がっていることも指摘しておく必要がある。複数の日本戦の観客席で目にした旭日旗だ。あらかじめ前提を整理しておくと、この大会で旭日旗の持ち込みは禁止されておらず、現状は試合会場で散見される程度で、大きく目立っても深刻な問題になってもいない。では、なぜ指摘するのか。それは、誤ったメッセージを発信しかねないと懸念するからだ。
略)
石戸諭(ノンフィクションライター)
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/10/post-13247.php
Newsweek 2019年10月23日(水)16時50分
旭日旗で間違ったメッセージが伝わる可能性もある(2012年に埼玉で行われたサッカーワールドカップアジア最終予選の対イラク戦) KIM KYUNG-HOON-REUTERS
敵味方一緒に応援するのがラグビーのスタイル(10月12日、福岡) PETER CZIBORRA-REUTERS
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そろそろリーマン止めてもいいかも…こんなんでいいんだ(無料でもらえるし)
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