司法、裁判官と聞くと、公平、中立、誠実といったイメージを抱く人が多いでしょう。しかし、日本の司法の現状は、必ずしも理想とはかけ離れているかもしれません。元判事であり法学の権威である瀬木比呂志氏の著書『絶望の裁判所』(講談社現代新書)は、日本の裁判所の問題点を鋭く指摘し、大きな反響を呼びました。この記事では、同書を元に、国民を守らない裁判所の真実を紐解いていきます。
事件処理に終始する裁判官たち
多くの裁判官の関心は、事件を迅速かつ円滑に「処理」することに集中していると言われています。些細な民事紛争は淡々と処理し、冤罪事件の発生も軽視される傾向があるという指摘もあります。権力者や大企業の意向に沿った秩序維持、社会防衛を優先するあまり、真の正義が見過ごされている可能性も否定できません。
瀬木氏の衝撃的な判決と保守的な司法
瀬木氏は、現役判事時代に、従来の判例の流れに逆らい、独自の判断を下した判決を下したことがあります。夜間、暗い場所に違法駐車していた大型トラックにバイクが衝突した事故で、駐車車両の過失をより大きく認めたのです。しかし、この判決は、一部の法曹関係者から批判を受け、判例雑誌の解説でも、判決の中核部分が適切に扱われなかったという事例もあります(2001年1月26日千葉地裁)。これは、日本の司法界がいかに保守的で、新しい判断を嫌う傾向が強いかを示す一例と言えるでしょう。
alt: 暗闇に違法駐車されたトラックと衝突したバイクのイメージ
瀬木氏の新著『現代日本人の法意識』
『絶望の裁判所』から10年、瀬木氏は新著『現代日本人の法意識』を出版しました。同性婚、共同親権、冤罪、死刑制度など、現代社会における様々な問題について、日本人の法意識の深層に迫る内容となっています。
法意識が社会を変える
同書では、「なぜ日本の政治と制度は変わらないのか?」「なぜ日本は長期の停滞から抜け出せないのか?」といった疑問に対し、日本人が意識していない自らの「法意識」が鍵を握っていることを指摘しています。法意識の変化が、社会を変える原動力となる可能性を秘めていると言えるでしょう。
司法への不信感を払拭するために
司法への信頼を取り戻すためには、裁判官たちが事件処理に追われるだけでなく、真の正義を追求する姿勢を持つことが重要です。また、国民一人ひとりが法意識を高め、司法のあり方について関心を持つことも不可欠です。より良い社会の実現のためには、司法改革に向けた議論を深めていく必要があるでしょう。