遺族厚生年金は本当に「5年で打ち切り」?2025年年金制度改正法の全容と影響を徹底解説

2025年に成立した年金制度改正法には、遺族厚生年金の見直しが盛り込まれ、特に「5年の有期給付」への変更が大きな注目を集めています。「夫を亡くした私は5年後に遺族年金が打ち切られてしまうのではないか」と、多くの方が不安を感じているのではないでしょうか。本記事では、この年金制度改正法の具体的な内容と、どのような方がこの変更の影響を受けるのかについて、詳しく解説していきます。

年金制度改正法における「遺族厚生年金」見直しの詳細

厚生労働省の発表によると、2025年6月13日に成立した年金制度改正法において、「遺族厚生年金」の給付条件見直しが決定されました。この改正の主な目的は、遺族年金制度における長年の男女差を解消し、より公平で持続可能な制度を実現することにあります。これまでは、性別によって給付の条件が異なっていましたが、改正後は男女共通の基準が適用されることになります。

具体的な変更点としては、原則として60歳未満で配偶者を亡くし、かつ18歳年度末までの子どもがいない場合、遺族厚生年金の給付が5年間の有期給付となる点が挙げられます。しかし、これは一律に打ち切られるわけではありません。配偶者を亡くした後に生活再建が著しく困難であると認められる場合には、5年目以降も給付が継続されるような配慮措置が導入されます。さらに、給付期間が短縮される代わりに、対象となる5年間の年金額が増額される見込みで、約1.3倍の支給額になると予想されています。これは、配偶者を失った直後の経済的な負担を軽減し、生活の立て直しを支援するための措置と言えるでしょう。

年金制度改正法における遺族厚生年金の見直しに関する図。不安を抱える人々に影響を与える可能性のある変更点を示す年金制度改正法における遺族厚生年金の見直しに関する図。不安を抱える人々に影響を与える可能性のある変更点を示す

「見直し」の対象となるのはどのような人か?

今回の遺族厚生年金の見直しにより、具体的にどのような人が影響を受けるのでしょうか。最も大きな影響を受けるのは、2028年度末時点で40歳未満であり、かつ18歳年度末までの子どもがいない女性です。厚生労働省の推計では、年間約250人の女性がこの新たな5年間の有期給付の対象となると見込まれています。一方で、2028年度に40歳以上となる女性については、従来の制度がそのまま適用されるため、今回の変更による影響はありません。

また、今回の改正では、男性の遺族年金受給要件も大幅に見直されます。これまで、子どものいない男性が遺族年金を受け取れるケースは限られていましたが、改正後は、18歳年度末までの子どもがいない60歳未満の男性も、女性と同様に5年間の有期給付を受けられるようになります。これに該当する男性は年間約1万6000人に上ると予想されており、女性よりも多くの男性がこの変更の影響を受けると考えられます。

加えて、給付額の増加を目的とした「有期給付加算」や、夫婦の年金記録を分割して合算できる「死亡分割」といった新たな増額措置も新設される予定です。これらの改正は2028年4月からの施行が予定されており、これにより、配偶者を亡くした直後の生活支援がより強化され、特に子どものいない配偶者は、これまでよりも手厚い支援を受けられるようになります。

まとめ

2025年の年金制度改正法による遺族厚生年金の見直しは、男女間の公平性を高め、配偶者を失った直後の生活支援を強化することを目的としています。最も重要な点として、全ての遺族厚生年金が「5年で打ち切り」になるわけではなく、対象となるのは「60歳未満で18歳年度末までの子どもがいない配偶者」に限定されます。また、2028年度に40歳以上となる女性は、従来通りの制度が適用されるため、不安に感じる必要はありません。今回の改正は、特に子どものいない若年層の配偶者に対し、より手厚い短期的な経済支援を提供することを意図しており、制度の公平性と実情への適応を図るものです。

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