バリ島、楽園の影にゴミ問題 観光客増加で深刻化

楽園の島、バリ島。美しいビーチと豊かな自然で世界中から観光客を魅了するこの島が、深刻なゴミ問題に直面しています。観光客の増加は経済効果をもたらす一方、環境への負荷も増大させているのです。今回は、バリ島のゴミ問題の現状と、その解決に向けた取り組みについて詳しく見ていきましょう。

観光客急増でゴミ問題が深刻化

コロナ禍を経て、バリ島の観光客数は再び急増しています。2022年1月から11月までの外国人観光客数は約1496万人と、前年同期比で11%増加。コロナ以前の水準を回復し、活気を取り戻しているように見えますが、その裏では深刻なゴミ問題が進行しています。特に観光客が集中する南部地域では、ゴミ処理が追いつかず、美しい景観が損なわれているのです。

バリ島のゴミ問題バリ島のゴミ問題

バリ島では年間160万トンものゴミが発生し、そのうち30万トンがプラスチックゴミと言われています。驚くべきことに、観光客が排出するゴミの量は、住民の3倍以上。適切に処理されないゴミ、特にプラスチックゴミは、水路を通じて海に流れ込み、海洋汚染を引き起こしています。

海辺を埋め尽くすプラスチックゴミ

今月初めには、激しい波によって大量のプラスチックゴミがバリ島南部のケドンガナン海岸に押し寄せ、海岸線がゴミで埋め尽くされるという事態が発生しました。地元住民、ホテル従業員、観光客ボランティアなど600人以上が清掃活動に投入し、1週間で25トンものゴミが回収されました。

この現状に、バリ島在住の環境活動家、ワヤン・スダルマ氏(仮名)は、「美しい自然を守るため、観光客一人ひとりの意識改革が必要不可欠です。ゴミの分別や削減を心掛け、持続可能な観光を実現していくことが重要です。」と訴えています。

観光税導入と更なる対策

インドネシア政府は、この問題に対処するため、2023年2月から外国人観光客に対し1人あたり15万ルピア(約1400円)の観光税を導入しました。しかし、バリ島観光庁や観光団体は、この程度の税金では問題解決には至らないと指摘し、ホテルや宿泊施設の建設規制の強化を求めています。

バリ州政府は中央政府に対し、主要観光地における新規ホテルやリゾート、ナイトクラブ、ビーチクラブなどの建設許可を2年間停止するよう要請しています。

バリ島の美しいビーチバリ島の美しいビーチ

バリ島北部の開発計画

インドネシア政府は、バリ島北部地域に新たな空港を建設し、「第2のシンガポール」として開発する計画を進めています。これにより、南部に集中している観光客を北部へ分散させ、ゴミ問題の緩和を図る狙いです。

この計画については、環境保護の観点から懸念の声も上がっています。新たな開発が更なる環境破壊につながる可能性も否定できず、慎重な検討が必要となるでしょう。

楽園の島、バリ島を守るためには、政府、観光業者、そして観光客一人ひとりの協力が不可欠です。持続可能な観光を実現し、美しい自然を未来に残していくために、私たちは何ができるのか、改めて考えてみる必要があるでしょう。