アルバニアで深刻な社会問題となっている、女児中絶の実態に焦点を当てます。根深い家父長制の影で、何万人もの女児が誕生の機会を奪われている現状、そして歪んだ性比が社会に及ぼす影響について、専門家の意見も交えながら詳しく解説します。
繰り返される悲劇:女児だと分かると中絶を強要
アルバニアでは、男の子を強く望む家庭が多く、女の子を妊娠すると中絶を迫られる女性が後を絶たないという現実があります。リナさん(仮名)もその一人。4人目を妊娠した際、女の子だと分かると夫から暴力を振るわれ、中絶せざるを得ない状況に追い込まれました。「夫は男の子でないと分かると激怒し、私は死にかけた」とリナさんは涙ながらに語っています。このような悲劇は、アルバニア社会の影で繰り返されています。
alt
数万人の女児が消えた?歪んだ性比が示す深刻な現実
国連人口基金のアルバニア担当者によると、過去10年間で2万1000人もの女児が「消失」したと推定されています。これは、女児であることを理由に中絶された数がいかに多いかを物語っています。 国連の調査では、すでに娘がいる家庭の約25%が、もう1人娘を持つくらいなら中絶を選ぶと回答しています。この数字は、アルバニアにおける男児選好の深刻さを改めて浮き彫りにしています。
社会構造が生み出す性差別:男児は「大黒柱」、女児は「重荷」
アルバニアをはじめとするバルカン半島では、家父長制が根強く残っています。調査報道ジャーナリストであり、女性の人権活動家でもあるアニラ・ホッジャ氏によると、これらの地域では男児は「大黒柱」、女児は「重荷もしくは好戦的社会における弱い性」と見なされる傾向が強いといいます。このような社会構造が、女児中絶という悲劇を生み出す背景にあると考えられます。
違法な胎児性別判定:容易な検査が助長する性差別
アルバニアでは、胎児の性別を理由とした中絶は法律で禁じられています。しかし、妊娠7週目には簡単な血液検査で胎児の性別が判明するため、実際には女児中絶が横行しているのが現状です。この血液検査は医師の許可なく受けることができ、確度は90%と高いため、性差別的な中絶を助長する一因となっています。
alt
希望の光:未来への変化
マリアさん(仮名)も、お腹の子が女児だと分かると、夫の母親と兄弟から中絶を迫られました。しかし、彼女は強い意志で出産を決意。「子どもを産むことを決めた」と力強く語っています。マリアさんのように、社会の圧力に屈せず、自分たちの意思で子どもを産み育てる女性たちもいます。彼女たちの存在は、未来への希望の光と言えるでしょう。
アルバニアの未来:性比是正への取り組み
アルバニアでは、新生児の男女比が世界で4番目に大きく歪んでいるというデータがあります。専門家によると、生物学的には男105に対し女100が標準的な比率とされていますが、アルバニアでは男111に対し女100という異常な数値を示しています。この歪みは、社会の不安定化につながる可能性も懸念されています。性比是正のため、政府や国際機関による取り組みが求められています。
私たちにできること:意識改革と支援の必要性
アルバニアで起きている女児中絶の問題は、決して他人事ではありません。世界中で、今もなお多くの女性たちが性差別に苦しんでいます。私たち一人ひとりがこの問題について真剣に考え、意識改革を進めていくことが重要です。また、アルバニアの女性たちを支援するための活動にも目を向け、積極的に協力していく必要があるでしょう。