中居正広さんの女性トラブルを巡り、CM“撤退ドミノ”が続いているフジテレビ
芸能界引退を発表した中居正広さんと女性とのトラブルを巡り、フジテレビのCM“撤退ドミノ”が止まらない。すでに70社以上がCMの差し止めを行っており、今後はさらに増える見通しだ。そんななか、撤退した企業CMに替わり放送されているのが、ACジャパンによる公共広告。ACジャパンとはどんな団体なのか、事務局を取材した。(取材・文=佐藤佑輔)
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幹部が中居さんのトラブルに関与したとされるフジテレビが、前代未聞の大激震におそわれている。今月17日に港浩一社長が行った緊急記者会見では、会見に記者クラブ以外のメディアを入れない姿勢や、テレビ中継を行わないという対応に批判が殺到。調査体制の不備なども厳しく指摘された。会見の内容を受け、スポンサー各社は続々とCM出稿の差し止め。その数は現時点で70社以上にのぼり、今後もさらに増える見通しで、フジテレビでは27日に予定している2度目の記者会見であらためて騒動の説明を行うとしている。
そんななか、企業CMから差し替える形で出稿が急増しているのが、ACジャパンによる公共CM。ネット上では「フジテレビのCM、マジでACジャパンばっかり」「そもそもACジャパンって何なの?」「ACジャパンばっかりでうんざり」「東日本大震災を思い出す」といった声も上がっている。
ACジャパンの前身である「関西公共広告機構」は、大阪万博翌年の1971年に誕生。提唱者は当時のサントリー社長・佐治敬三氏で、設立後は初代理事長を務めた。公益社団法人ACジャパンの奥山一繁事務局長は、「佐治氏はアメリカのAC(The Advertising Council=広告評議会)の活動を知り、これを日本で実現したいと考えました。『環境汚染』『公共マナーの悪化』『人間関係の希薄化』 など、景気上昇の陰で出はじめた社会のひずみに光をあて、みんなで考えるきっかけをつくりたい。そんな思いが、『企業が少しずつお金を出し合い、世の中のためになるメッセージを、広告という形で発信しよう』という呼びかけになりました」と設立の経緯を説明する。
「ACジャパンは、公共広告の制作や発信を通して社会と公共の福祉に貢献することを目的に活動する民間の団体です。社会にとって有益なメッセージを公共広告という形で発信しているCSR(Corporate Social Responsibility=企業の社会的責任)活動をしています」と奥山事務局長。公共広告として扱う内容には「公共マナー」「環境問題」「いのちの大切さ」「親子のコミュニケーション」といった普遍的なテーマや、「いじめ」「認知症」「ネットモラル」「防災」などの時代・世相を反映したテーマ、公共福祉活動に取り組んでいる団体への支援キャンペーンなどがあり、その時々で社会が必要としているメッセージを発信しているという。また、阪神・淡路大震災、東日本大震災、熊本地震、能登半島地震など、大災害の発生時や新型コロナウイルス感染拡大に際して臨時キャンペーンを実施。お互いを助け合う心の大切さを伝えることで、CSRや公共福祉などの社会貢献を目指している。
運営資金については「主に1000社を超える会員社と個人会員による会費を基に行っており、税金や国からの公的な支援などは一切受けていません。全国で300人を超える会員社の委員によるボランティア活動に支えられており、広告枠の提供や広告制作への参加・表現アイデアの提供などが運営における最大の特徴です」と奥山事務局長。
今回のような不祥事や大規模災害時に公共広告が増える仕組みについては「毎年1回、公共広告を制作し、その公共広告作品をテレビ局様や新聞社様に納品しています。広告は原則としてテレビ、ラジオ、新聞、雑誌の4媒体用で、その他に交通・屋外広告を制作しています。どの作品をいつどれだけ流すかはACの会員社である媒体社の判断となっています。テレビCMでは、媒体社が持つ広告枠の無償提供によりACジャパンの広告が放送・掲載されており、ACは媒体費用を支払っていません」と説明する。
ネット上では、東日本大震災発生時にACジャパンの公共広告が繰り返し放送されたことを受け、「ACのCM見ると不安になる」「ポポポポ~ンがトラウマ」といった声も上がっている。一連の声を受けては、「東日本大震災のとき、繰り返し放送された弊団体の公共広告に対して、さまざまな視聴者様からのお声をいただきました。そのようなお声をしんしに受け止め、災害時用の広告を制作し、能登半島地震の時にも、北陸地方を中心に災害時用の広告が放送されました」と、放送地域や内容を精査するなどの工夫を行っているという。
公共広告が果たす役割は大きいが、ACジャパンCM一色の状況は、視聴者にとっても落ち着かないもの。フジテレビにはスポンサーが納得してCMを提供できるような、丁寧な説明が求められている。
佐藤佑輔