(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)
■ フジテレビの体質に染みついたタレント偏重主義
【写真】中居トラブルは限られた幹部にしか情報共有ができていなかった。この人は知っていたのか?
女性とのトラブルが発覚した中居正広が芸能界から消えた。そして、このトラブルにフジテレビの編成幹部が関与していたことが報じられると、同様の被害を訴える女子アナウンサーまで現れ、まるで女性社員や女子アナウンサーをタレントに〈献上〉〈上納〉するかのような同局の体質や、この問題に対する経営幹部の姿勢に批判が集まっている。
私はかつて、フジテレビの報道情報番組にスタッフとして携わり、またドキュメンタリー作品(『麻原法廷漫画』というアニメを使った作品など複数)を制作して放送されてきた。フジテレビには感謝もしているが、そこで体験したり、見聞きしたりしたことをふまえて、この問題について言及してみたい。
今回の問題の本質に横たわるもの。遠因にあたるもの。それは、タレント依存の番組作りや染み付いたタレント偏重の体質があるように思えてならない。
まずは経緯を整理しよう。
『週刊文春』が報じたところによると、2023年6月、女性(X子さん)は中居やフジテレビの編成幹部A氏を交えた複数人で会食を行う予定だった。ところが、
【中居以外の参加者が現れなかったのだ。その後、彼女は中居から意に沿わない性的行為を受け、トラブルに発展。双方が代理人弁護士を立て、中居は九千万円の解決金をX子さんに支払ったという】(『週刊文春』1月16日号より)
「意に沿わない性的行為」があったのなら、もはや「トラブル」というより犯罪行為である。こうした騙し討ちのような状況を仕組んだのがA氏とされる。
昨年末からこの「9000万円トラブル」が報じられると、今年1月9日に中居は公式ホームページで『お詫び』と題する文章を公開。女性とのトラブルを認めている。
【トラブルがあったことは事実です。そして、双方の代理人を通じて示談が成立し、解決していることも事実です】
ところが、そこには「お詫び」に似つかわしくないこんな一文もあった。
【なお、示談が成立したことにより、今後の芸能活動についても支障なく続けられることになりました】
この段階では、能天気でいられたのだろう。
■ 騒動がフジテレビの経営揺るがすほど拡大、引退を余儀なくされた中居
一方で、フジテレビは社員の関与をキッパリ否定。
【このたび一部週刊誌等の記事において、弊社社員に関する報道がありました。内容については事実でないことが含まれており、記事中にある食事会に関しても、当該社員は会の設定を含め一切関与しておりません】(フジテレビ公式ホームページより)
すると、このA氏によって中居ともう一人の男性タレントとホテルのスウィートルームでの「飲み会」に参加した女子アナウンサーが、同じような被害に遭いそうになっていたことを『週刊文春』で告白。常習的に女子アナを接待に使ったり、タレントに〈献上〉〈上納〉したりしていたと報じている。
テレビ各局が中居の出演する番組の放送を見合わせたり、出演場面をカットして放送したりする中、日本テレビの『ザ! 世界仰天ニュース』はいち早く中居のMC降板を決定。フジテレビでは、1月17日に港浩一社長が記者会見を開くも、参加できる記者は限定され、しかもテレビカメラも入れさせず、その会見内容も曖昧なものに終始した。調査委員会を立ち上げるとしたものの、独立性が低いものであることにも批判の声があがった。