台風19号の大雨で甚大な被害を受けた福島県いわき市でも、浄水場が浸水するなどした影響で、広範囲で断水が発生した。断水期間が長期に及ぶ場所もあり、家屋の片付けなどの復旧作業にも遅れが出ている。
「ここまで長くかかるとは思わなかった」。同市平地区にある市営住宅平窪団地の管理人を務める大塚徳次さん(75)は、こう話す。
同団地では敷地内にある給水ポンプが浸水し、各部屋に水を供給できなくなった。周辺地域の断水は先に解消したが、同団地ではポンプの交換作業が必要になったため、全室に水が通ったのは断水から19日目の10月31日だった。
平成23年の東日本大震災の際にも断水に苦しんだ経験もあり、備蓄していた水で「3日ぐらいは生活できた」という大塚さんだが、食事や洗濯、トイレを流すのにも水は必須。結局、徒歩10分ほどの距離にある公園に設置された給水所に通うことを余儀なくされた。
3袋で、重さにして約20キロ分の水を運ぶ毎日。1日あたり最高で5~6往復することもあった。途中で団地敷地内に給水用の蛇口が設置されたが、エレベーターが浸水で動かないため、水を持って階段を登らなくてはならず、「心身ともに疲れを感じた」という。
周囲には片付け切れない水害によるごみが積み上がっている。「復旧作業の担い手が少ない。頑張っても限度がある」とこぼした。(吉原実、写真も)