「生活保護から抜け出せなくなる」38歳男性の絶望 「働きたいと願う障害者」の働く場所がない


【画像】50メートル以上歩けないため、移動手段はもっぱら自転車というヨシツグさん

 車が行きかう街道沿いに、人の気配が消えて久しい木造の建物がある。江戸時代より伝統工芸品を制作する家系が代々切り盛りしてきた工房だ。本当ならヨシツグさん(仮名、38歳)がここで家業を継ぐはずだった。

 しかし、今は別の街で障害年金を受けながら暮らす。1年ほど前に勤めていた会社を雇い止めにされた。新しい仕事が見つからないまま、昨年秋には失業保険の給付も切れた。その後はわずかな貯金を切り崩しながら生活している。

 とどまることを知らない物価高もヨシツグさんの暮らしを圧迫する。最近はカップラーメンすら高くて買えなくなり、袋麺に変えた。スーパーでは鶏肉はブラジル産、豚肉は小間切れと決めている。牛肉はとうの昔に高嶺の花だ。

 伝統文化の継承を担うはずだったヨシツグさんの人生はどこで変わってしまったのか。

■怒鳴り合う声が絶えない家だった

 物心ついたとき、すでに父親は統合失調症で入退院を繰り返していた。幼稚園のころ、激高した父親が母親の首を締めあげていた光景を鮮明に覚えている。母親は胃潰瘍で入院。ヨシツグさんたちきょうだいもささいなことから平手やこぶしで殴られた。「毎日怒鳴り合う声が絶えない家でした」。



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