高市早苗首相(64)が国会で行った「台湾有事」に関する答弁が波紋を広げている。この発言は冷え込む日中関係の発端の一つとされており、発言から1ヶ月あまりが経過した12月11日、毎日新聞は、事前に官僚が作成した首相の答弁資料には「台湾有事に関する質問には答えない」と明記されていたと報じた。これにより、高市首相の答弁が政府の公式見解とは異なる個人的な見解であった可能性が浮上し、政治家や世論からの批判が噴出している。
首相の「台湾有事」答弁とその背景
11月7日の衆院予算委員会で、立憲民主党の岡田克也議員(72)は、台湾情勢を念頭に置いた日本の「存立危機事態」の認定に関する質疑を行った。高市首相はこれに対し、「(中国が)戦艦を使って、武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になりうる」と答弁した。この発言は、高市首相が昨年9月に「中国による台湾の海上封鎖が発生した場合は存立危機事態になるかもしれない」と述べていた経緯が背景にある。歴代政権は、存立危機事態の認定に関して台湾問題を直接的に関連付けることを避け、「実際に発生した事態の個別具体的な状況に即し総合的に判断する」という戦略を取ってきた。岡田議員は、高市首相がこの歴代政権の戦略を踏襲するかを確認する意図があったとされる。
当初、高市首相は歴代政権の方針に沿った答弁を行っていたものの、岡田議員が「存立危機事態を軽々しく言うべきではない」と釘を刺すと、急に「逸脱」し、問題視されている「台湾有事」答弁が飛び出した形だ。
明らかになった官僚作成の答弁資料
今回の毎日新聞の報道では、政府が立憲民主党の辻元清美参院議員(65)に開示した答弁資料の内容が明らかになった。辻元氏も11日夜にX(旧Twitter)で開示資料を公開しており、岡田議員の事前の質問通告には次のように記されていた。《存立危機事態を認定して自衛隊が出動して武力行使を行えば、日本も武力行使を受ける可能性が高い。国民の生命や暮らしを守ることが大事であり、存立危機事態の認定の可能性を軽々に言うのはいかがなものか。総理の見解を問う》。
これに対し、官僚が準備した高市首相の予定答弁は次の通りだった。《(台湾有事という仮定の質問にお答えすることは差し控えるが、)我が国の安全を確保し、国民の生命と財産を守り抜くことが政府の最大の責務であると考えている》《その上で、一般論として申し上げれば、いかなる事態が存立危機事態に該当するかについては、実際に発生した事態の個別具体的な状況に即して、政府が全ての情報を総合して判断することとなる》。
辻元氏はXで、開示された資料の内容を受けて「やはり、あの答弁は高市総理の個人的見解であり、官僚が書いたのではないことが明らかになりました。岡田議員は詳細に質問通告をしており、政府も従来の政府見解にそったやりとりを想定していたことがわかります」とコメントし、高市首相の答弁の問題点を指摘した。官僚が作成した答弁資料では、「台湾有事という仮定の質問にお答えすることは差し控える」と、具体的な言及を避けるよう明記されていたにもかかわらず、首相はこれに従わなかったことになる。
国会での高市早苗首相。台湾有事を巡る答弁が波紋を呼んでいます
各方面からの批判と反応
高市首相の答弁以降、SNSや一部のワイドショーなどでは、答弁を引き出した岡田議員に非があるという批判が続出した。しかし、立憲民主党の野田佳彦代表(68)をはじめとする所属議員は、「批判される筋合いはない」と相次いで表明。今回の資料開示により、官僚作成の答弁資料で「台湾有事に関する質問には答えない」と念押しされていたにもかかわらず、高市首相がその指示を「スルー」したことが判明し、X上では次のような批判の声が噴出している。
- 「今回の事態は総理のスタンドプレーが引き起こした事故なのは間違いないと認識せざるを得ない。今後の高市総理の振る舞いが、総務大臣時代と同じにならないよう祈るのみ」
- 「立憲民主党の岡田議員、むしろ高市首相にこれでもかというほど気を使っていたんですね。でもアドリブですべてぶち壊してしまった高市さん…」
- 「事前通告のあった質問で官僚ペーパーには『答えるな』とはっきり書いてあったのに、『それを見ながら』イキった発言したんだからそれはもう高市さんの責任なんだよ。いいからさっさと謝罪して退陣しろ」
- 「非常に丁寧な質問通告であり、答弁内容もきちんと用意されていたようです。結局、岡田氏にはなんの落ち度もありませんでした。散々、岡田氏を叩いていた方々からお詫びなり弁解をお伺いしたいところではあります」
また、これまでも高市政権への批判を繰り返してきた宝塚歌劇団出身の女優、毬谷友子(65)もXで毎日新聞の記事を引用し、「今すぐ辞任してほしい」と強く訴えている。
今回の毎日新聞の報道により、高市首相の「台湾有事」に関する答弁が、政府の公式見解とは一線を画する個人的な見解であったことが明らかになった。この「アドリブ」とも言える発言は、外交上のデリケートな問題に触れるものであり、今後の日中関係や日本の安全保障政策に影響を及ぼす可能性も指摘されている。首相の言葉の重みが改めて問われる事態となっている。





