トランプ氏WHO脱退で中国の影響力増大?日本の役割とは

元国連大使の吉川元偉氏が産経新聞のインタビューで、トランプ前米大統領のWHO脱退決定は中国の影響力拡大につながると警鐘を鳴らし、日本を含む有志国による働きかけの必要性を訴えました。この記事では、吉川氏の主張と今後の展望について詳しく解説します。

米国不在で中国がWHOの主導権を握るリスク

吉川氏は、米国のWHO脱退により、中国が最大の拠出国となり、WHOにおける発言権が強化されることを懸念しています。最大の拠出国は人事や政策決定に大きな影響力を持つため、中国の主導権が強まれば、国際保健のガバナンスに偏りが生じる可能性があると指摘しています。

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実際、WHO事務局長は米国の脱退決定を受け、活動費削減を余儀なくされるとの声明を発表しました。これは、米国の拠出金がWHOの運営に不可欠であったことを示しています。米国はコロナ発生時のWHOと中国の関係に不信感を抱いていたようですが、皮肉にも脱退によって中国の影響力が増大する結果となってしまいました。

ODA凍結も途上国に深刻な影響

吉川氏は、トランプ前大統領による政府開発援助(ODA)凍結令にも懸念を示しています。世界最大のODA拠出国である米国の援助停止は、多くの途上国にとって深刻な打撃となるでしょう。国際協力の観点からも、米国のWHO脱退とODA凍結は世界的な課題解決を阻害する要因となりかねません。

日本は「変な声」に惑わされず冷静な対応を

吉川氏は、日本がトランプ前大統領の言動に過剰に反応するのではなく、冷静な対応をすべきだと主張しています。同盟国である米国との関係を重視しつつも、問題点があれば同志国と連携して適切に伝えるべきだと述べています。特に、安倍元首相時代には、トランプ政権に対して効果的なコミュニケーションを行っていた実績を踏まえ、同様の冷静な外交手腕が求められると強調しています。

トランプ氏の安全保障観に見られる孤立主義

吉川氏は、トランプ前大統領の安全保障観についても言及し、就任演説での同盟国軽視とも取れる発言を問題視しています。集団的自衛権に基づく米国の「抑止力」の確認を求めるNATO諸国や日本に対し、トランプ前大統領は同盟国への負担軽減を優先する姿勢を示していました。パナマ運河の管理権返還やグリーンランドの取得発言からも、彼の孤立主義的な傾向が窺えます。

日本の役割:国際協調と冷静な外交

米国のWHO脱退とODA凍結は、国際社会に大きな影響を与える出来事です。吉川氏の指摘を踏まえ、日本は国際協調を促進し、冷静な外交努力を通じて事態の改善を図る必要があります。多国間主義の重要性を改めて認識し、世界的な課題解決に向けてリーダーシップを発揮することが求められています。

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今後の国際情勢を見据え、日本は同盟国との連携を強化しつつ、国際機関における役割を積極的に担っていくべきでしょう。世界的な課題解決に貢献するためにも、バランスのとれた外交戦略が不可欠です。