インフルエンザが大流行しています。
筆者のクリニックにも、内科・小児科を問わず高熱の患者さんが次々に受診しています。多摩地域の救急病院で当直していると、高齢者だけでなく、10〜20代の若い方までインフルエンザで救急搬送されてきます。
■若い人も「つらすぎて動けない」
今年流行しているA香港型(AH3)は、発熱や全身のだるさが強く、吐き気や下痢などの胃腸症状を伴う人も少なくありません。ふだんは滅多に風邪をひかない元気な若い人でも、「つらすぎて動けない」と救急車を呼ぶほど。入院が必要になる場合も多いです。
しかし、診療をしていていちばん悩ましいのは、こうしたインフルエンザそのものよりも、「インフルエンザ検査は陰性。でも39℃前後の高熱が何日も続く」というパターンです。
インフルエンザではなさそうなのに、高熱が続き、解熱剤を飲んでもすぐにぶり返す。その背景には、インフルエンザ検査や診察だけではすくい上げることができない別の感染症――とくに肺炎が隠れていることが少なくありません。
この記事では、そんな「インフル陰性なのに高熱が続くとき」に疑うべき代表的な肺炎と、注意すべきサインについて解説します。
まず押さえておきたいのは、インフルエンザの迅速検査は、決して万能ではないということです。
一般的に使われている抗原検査は、感度が6〜7割程度とされ、本当はインフルエンザなのに「陰性」と出てしまう、いわゆる偽陰性が少なくありません。発症から時間が経っておらず、ウイルス量が少ないタイミングで検査をすると、特に陰性に出やすくなります。
そのため、
・家族など同居している人がインフルエンザと診断されている
・典型的な症状(突然の高熱、関節痛、悪寒など)が揃っている
といった場合には、検査で陰性となってもインフルエンザとみなして、治療を始めることもあります。
一方で、本当にインフルエンザではない「別の病気」の可能性も常に考えなければいけません。「陰性だったから安心」と油断してしまうと、ほかの重大な感染症に気づくのが遅れてしまうことがあります。
■高熱を起こす代表的な肺炎
高熱が出たとき、インフルエンザ以外にどんな病気が隠れているのでしょうか。鼻やのどを診たり、胸の聴診をしたりした医師が迷うような、3つの肺炎について解説します。





