明治天皇が伊勢神宮の前に参拝したのはなぜスサノヲ? 天皇家とスサノヲの知られざる関係

明治天皇は東京遷都後、伊勢神宮よりも先にスサノヲを祀る氷川神社を参拝しました。なぜ天皇家の祖神であるアマテラスではなく、スサノヲだったのでしょうか?この記事では、歴史作家・関裕二氏の著書『スサノヲの正体』(新潮新書)を参考に、天皇家とスサノヲの不思議な関係、そして歴代天皇が伊勢神宮を長らく参拝しなかった謎に迫ります。

明治天皇の意外な行動:伊勢神宮より先に氷川神社へ

明治天皇は東京遷都後の最初の行幸地として、スサノヲを祀る氷川神社を選びました。伊勢神宮への参拝は翌年でした。関東にはアマテラスを祀る神明社も存在しますが、なぜ氷川神社が選ばれたのでしょうか?

明治天皇の肖像写真明治天皇の肖像写真

明治天皇は遷都前にも、男山八幡宮、賀茂下上社、坐摩神社、住吉大社、熱田神宮など、様々な神社を参拝しています。これらの神社と氷川神社には、何か共通点があるのでしょうか?この謎を解く鍵は、伊勢神宮の歴史に隠されています。

千年以上、歴代天皇が伊勢神宮を参拝しなかった謎

7世紀後半に現在の形となった伊勢神宮ですが、持統天皇を除き、明治維新まで歴代天皇は伊勢神宮を参拝していませんでした。伊勢神宮は国家の庇護を受け、広大な森林を保有する日本一の社格を誇る神社です。にもかかわらず、なぜ歴代天皇は伊勢神宮を無視し続けてきたのでしょうか?

熊野古道の写真熊野古道の写真

この謎は、スサノヲとゆかりの深い熊野にもつながります。平安時代後期以降、天皇の行幸こそありませんでしたが、上皇や皇族、貴族は熊野詣を盛んに行っていました。交通の便が悪く秘境であった熊野になぜ人々は惹きつけられたのでしょうか? 民俗学者の五来重氏は熊野を「謎の国、神秘の国」と表現しています。

スサノヲとアマテラス:神話の光と影

スサノヲは神話の中では、天上界では乱暴を働き追放される悪神として描かれる一方、地上界では八岐大蛇を退治する英雄として描かれています。この二面性を持つスサノヲと、太陽神アマテラスの関係性も、この謎を解く上で重要な要素となります。

スサノヲの正体 書籍スサノヲの正体 書籍

古代史研究家の山田教授(仮名)は、「スサノヲのイメージは時代と共に変化し、地域によっても異なる解釈が存在する。その多様な側面を理解することが、古代日本の信仰や政治を読み解く鍵となる」と指摘しています。明治天皇が伊勢神宮の前に氷川神社を参拝した背景には、こうした複雑な歴史的、宗教的背景が絡み合っていたのかもしれません。 更なる研究が待たれます。