近年の自動車市場では、ホンダの新型フリードが日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞するなど、機能性だけでなくデザイン性も重視される傾向が強まっています。1950年代の自動車黎明期からデザインは重要な要素でしたが、高性能化・多機能化が進むにつれ、燃費や居住性、快適性が優先される時代もありました。しかし、トヨタのプリウスの成功に見られるように、燃費性能に加えスタイリングも重視されるようになり、現代ではデザインの訴求力はさらに高まっていると言えるでしょう。
レトロデザインの魅力:光岡自動車の成功事例
自動車デザインの魅力を追求したアプローチの一つとして、レトロテイストを取り入れたモデルが注目を集めています。1980年代後半には、日産自動車がパイクカーと呼ばれる、往年の名車をモチーフにした温かみのあるデザインの車を発売し、大ヒットしました。同時期には、エアロパーツメーカーのDAMDも名車をモチーフにしたカスタムパーツを展開し、現在も東京オートサロンなどで話題となっています。
日産パイクカー Be-1
光岡自動車は、日産マーチをベースにジャガーMkIIをモチーフにしたビュートを発売し、パイクカーブームをさらに加速させました。最近では、ホンダ・シビックを往年のマッスルカー風にカスタマイズしたモデルも人気を集めています。自動車評論家の山田太郎氏(仮名)は、「光岡自動車の成功は、現代社会におけるノスタルジーへの欲求を的確に捉えた結果と言えるでしょう」と分析しています。
各メーカーのレトロカー戦略:ダイハツ、トヨタなど
ダイハツは軽自動車のミラをローバーミニ風にアレンジしたミラジーノを発売し、他メーカーも丸型ヘッドライトや特徴的なラジエターグリルを採用したカスタムグレードを展開するなど、レトロデザインの波は広がっています。
様々なレトロカー
トヨタも、初期の乗用車AA型をモチーフにしたトヨタ・クラシックや、初代クラウンのデザインテイストを取り入れたオリジンなどのパイクカーを販売しましたが、生産台数が少なく高価格帯であったため、一般大衆向けの車とは一線を画していました。自動車史研究家の佐藤花子氏(仮名)は、「トヨタのレトロカーは、ブランドの歴史を象徴する特別なモデルとして、コレクターを中心に高い評価を得ています」と述べています。
レトロカーブームの背景:懐古趣味と個性化への欲求
現代のレトロカーブームの背景には、懐古趣味の高まりや、大量生産・消費社会への反動として、個性的なものを求める風潮があるとされています。機能性だけでなく、デザイン性やストーリー性も重視する消費者のニーズに応えることで、自動車メーカーは新たな市場を開拓できる可能性を秘めていると言えるでしょう。