クリスティ・ノーム米国土安全保障長官は3日、ベネズエラから米国に避難している数十万人に対して与えている一時保護資格(TPS)を取り消す通知書を出した。連邦官報に5日に掲載される予定で、掲載から60日後に発効する。第1弾として30万人超の避難民らが4月上旬に資格を失う見通しで、強制送還される可能性がある。
TPSは、内戦や自然災害、伝染病などに見舞われた国から避難してきた人に、一時的な滞在と就労を認める制度。対象国は現在、ベネズエラやハイチ、ニカラグアなど17カ国に上る。避難民はこの制度によって危険な国への強制送還を免れることができる。ただし、永続的な法的地位は与えられない。
今回の取り消しは、トランプ大統領が1月20日に署名した大統領令に基づく措置。大統領令では、ベネズエラのほか、ハイチやニカラグアなどを名指しして「一時入国プログラム」を終了させるよう国土安全保障長官に指示していた。
通知書では、ベネズエラ避難民の米国滞在を許可することは「国益に反すると判断した」と記した。その根拠として、TPSを利用して国際犯罪集団「トレン・デ・アラグア」のメンバーが入国していることや、全米の各市長がベネズエラ避難民の受け入れを試みているが「市のシェルター、警察署、支援サービスは限界に達している」ことなどを挙げた。
取り消しは2段階で行われる。まず、2023年に資格を取得した推計約34万8000人の避難民が4月に資格を失う。次に、21年に資格を得た避難民が9月10日に資格を失う。米メディアによると、こちらも対象は約30万人に上るという。
ベネズエラに対しては、トランプ氏が1月31日にグレネル大統領特使(特別任務担当)を派遣。グレネル氏はマドゥロ大統領と会談し、ベネズエラの施設に拘束されていた6人の米国人の帰国が実現した。トランプ氏は翌2月1日、米国内で拘束したベネズエラ人不法移民の全員を強制送還することでベネズエラ側と合意したと発表していた。【ワシントン西田進一郎】