ついに実現したトランプ大統領との首脳会談のため、6日からアメリカへ出発した石破首相。改めてその外交手腕に期待と注目度が高まっている。
いっぽうで石破茂首相の外交マナーがいまだに取り沙汰されているのも事実だ。ことの発端は、昨年11月、ペルーで開かれたアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議に関する報道だった。「各国の首脳と座ったまま握手を交わす」「式典中に一人だけ腕組み」といった数々のマナー違反を指摘され、「国の代表にふさわしくない」「官邸には指摘できる人がいないのか」と、大きな批判を呼んだ。
またもや首相周辺から不満が漏れた
1月9~12日、佳子夫人を伴ってマレーシアとインドネシアを訪問した際も、首相周辺から不満が漏れたのは、『「失礼のないようにしてください」とクギを刺され…石破総理「無愛想外交」の影響か? インドネシアの「塩対応」』で報じた通りだ。
APECの休憩時間で、石破総理が「座って握手に対応した」相手はマレーシアのアンワル首相。また、スマホをいじっていたときに隣に座っていたのは、インドネシアのプラボウォ大統領だった。失礼な対応をした当の相手との首脳会談だったのだ。
通常、国際会議の休憩時間は各国の首脳同士が個別に懸案を話し合う貴重なタイミング。安倍晋三元首相や岸田文雄前首相は、ここで積極的な動きを見せ、独自の信頼関係を築いていった。東南アジアは「対中国」の外交を考える上でも非常に重要なエリアであり、初手で悪印象をもたらしてしまったのは痛恨の極みといえるだろう。
第一印象が悪すぎた
歴代の首相経験者で、ここまで立ち居振る舞いに苦言を呈された人物は思い当たらない。専門家はどう見ているのか。皇室のマナー解説やNHK大河ドラマのマナー指導などでも活躍するマナーコンサルタント・西出ひろ子さんに見解を聞いた。
「私が知る限りでは、こうした指摘はたしかに記憶にありません。ただ、過去の首相が似たようなことをしていても、話題にならなかっただけなのではとも思います。石破首相の場合は、内閣発足の記念撮影のときから、服装やマナーについて不安視する声が多かったですね。やはり第一印象の悪さが尾を引いているのではないでしょうか……」
首相は、その後のG20でも「ネクタイが曲がった」状態で会場入りする失態を演じてしまっている。
「海外の政治家はドレスコードを非常に重視しますから、国際舞台に立つ以上、身だしなみはきちんとしなければなりません。たとえばイギリスでは、昼間はTシャツにジーンズというラフな格好の学生でも、夜にちょっとしたパーティーに出席するとなれば、女性はロングドレス、男性はタキシードをしっかり着こなします。国の代表ともなればなおさら意識していただきたいところです」(西出さん、以下「」も)
APECから帰国後は、サポート役の赤堀毅外務審議官に対して岩屋毅外務大臣が叱責したとの報道もあった。側近たちが状況に応じてアドバイスすることは難しいのだろうか。
「部下である秘書や側近から外交マナー等を指摘するのは、やはり非常に申し上げにくい、難しいことだと聞きました。とはいえ、だからといって何もお伝えしないのでは、かえってボスを苦しい立場に追いやってしまいます。かつて白洲次郎氏は、24歳上の吉田茂首相にどんなことでも率直に進言し、吉田首相はそれを素直に聞き入れて偉大な功績を残しました。トップは孤独なもの。“裸の王様”にならないように、周囲も助言することが必要だと思います」