【主張】米「不在」のEAS 中国主導の議論を許すな


 トランプ米政権は本気でアジアに関与し、自由や民主主義を掲げて、中国の権威主義、覇権主義に対抗しようとしているのか。そうした疑念を招きかねない。

 東アジアサミット(EAS)に正副大統領、国務長官の出席を見送ったことだ。就任したばかりのオブライエン大統領補佐官が代表を務める。

 EASは、東南アジア諸国連合(ASEAN)関連の首脳会合の一つで、東南アジア諸国のほか、日本や中国もメンバーである。

 日米両国は、「自由で開かれたインド太平洋」を掲げ、その要となる東南アジアの海洋国家と連携強化を図っている。

 中国は、軍事力、経済力でこの地域への影響力を増大させている。EASは日米と中国とが激しい綱引きを繰り広げる場だ。

 中国は南シナ海の軍事拠点化を進めている。ノーの要求を突きつけるには、周辺国を後押しする日米の存在が欠かせない。

 北朝鮮はまたも弾道ミサイルを発射した。北朝鮮の核問題はこの地域の安全保障上の最大の関心事だ。後見役の中国からも圧力維持の言質を取らねばならない。

 米国の「不在」で、中国は会議の主導権を握りやすくなったといえる。安倍晋三首相の責任は重くなったと認識すべきだ。

 トランプ大統領は最初の年の2017年、開催地のフィリピン入りしながら会議直前に帰国し、昨年はペンス副大統領を代理でシンガポールに送り込んだ。

 ただ、昨年のペンス氏は、周辺国での外交も含め、米国のこの地域への関与の継続や中国への対抗姿勢を明確に示した。

 ペンス氏は先の対中政策演説でも、尖閣諸島に対する挑発を含む中国の海洋進出や、強権統治、人権弾圧に強い警告を発したばかりだ。それだけに、米政権の今回のEASへの対応は残念だ。

 オバマ前米大統領は「アジア重視」を言いながら、実行に移したとは言い難い。それでもEASには米国が加わった11年以降、1度の例外を除き毎回出席した。

 東南アジアは地理的に米国から遠い。1日かぎりの会議とはいえ、首脳が足を運ぶことが、地域での信頼感につながる。

 安倍首相の役割は、中国に対し、航行の自由などで堂々と注文をつけ、日米に対する信頼を守ることにほかならない。



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