裁判員制度。殺人事件をはじめとする重大事件の判決に、一般市民が参加するこの制度。あなたは、もしも突然「人を裁け」と言われたら、どうしますか? 今回は、実際に裁判員を務めた50代塾講師のNさんの経験を通して、裁判員制度の現実と、Nさんの心境の変化について深く掘り下げていきます。
裁判員制度との出会い、そして長期裁判へ
Nさんは、ある日突然届いた「裁判員選任手続き期日のお知らせ」を見て、裁判所へ。実は、同封されていたカレンダーの日程表示を誤解していたNさん。裁判が長期間に及ぶことをきちんと把握していなかったのです。選任手続き当日、同じように誤解していた人が他にもいたことに驚いたと言います。裁判官から裁判の長期間化について説明があった際には、会場にどよめきが起こったそうです。
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さらに、裁判の内容は殺人、逮捕監禁致死という重大事件。選任手続きでは、「解剖写真を見ても大丈夫ですか」という質問に、辞退する人も少なくなかったとのこと。Nさんは「大丈夫だと思います」と答えたものの、弁護人から「思います」ではなく、はっきりとした返答を求められ、言葉に詰まってしまったそうです。
衝撃の解剖写真、そして眠れない夜
Nさんを含む裁判員候補者たちは、グループ面接を経て、正式に裁判員に選任されました。裁判では、事前に予告があった解剖写真はもちろんのこと、予告なしに提示された被害者の写真や、車中の遺体写真に大きなショックを受けた裁判員もいたそうです。中には、3日間眠れなかったという人も。Nさん自身も衝撃を受けたものの、眠れないほどではなかったとのこと。
しかし、この経験はNさんに大きな影響を与えました。事件の生々しい現実を目の当たりにし、精神的な負担も大きかったはずです。
裁判員制度の意義とNさんの想い
長期にわたる裁判、そして衝撃的な写真の提示。Nさんは、裁判員を務めることの大変さを身をもって経験しました。しかし、同時に、市民が司法に参加することの意義も感じていたようです。「血なまぐさい現実を知って疲れたが、裁判員は良い経験だった」と語るNさん。この言葉には、裁判員制度の重みと、Nさんの真摯な思いが込められています。
専門家の見解:裁判員支援の必要性
「裁判員経験者への精神的なケアは非常に重要です」と語るのは、裁判員制度に詳しい法学者、A教授。「特に、殺人事件のような重大事件を担当した場合は、トラウマになる可能性も否定できません。適切なサポート体制の構築が急務です。」
私たちにできること
裁判員制度は、私たち市民が司法に参加する貴重な機会です。しかし、同時に大きな責任と負担を伴う制度でもあります。Nさんの経験を通して、裁判員制度の現実を改めて見つめ直し、制度のより良い発展のために、私たち一人ひとりができることを考えていく必要があるのではないでしょうか。