道路寸断、停電に浸水…丸一日孤立の特養 千葉・長柄





床上浸水した特別養護老人ホーム「ほしの郷」で片付け作業に追われる職員ら=10月30日、千葉県長柄町(永田岳彦撮影)

 千葉県内で大きな被害が出た10月25日の記録的な豪雨で、長柄町の特別養護老人ホーム「ほしの郷」は床上浸水して停電となっただけでなく、外に通じる唯一の私道が土砂崩れで寸断され、入所者39人と職員15人が丸一日、孤立した。全員が無事だったが、深刻な被害を受けた施設の復旧作業は始まったばかり。台風15、19号に続く被災で職員にも疲労の色がにじんでいる。

 「平成18年に施設を建ててから、一番ひどい被害。台風15号や19号の停電も何とか乗り切ったのに、まさかこれほどの被害を受けるなんて…」。施設を運営する社会福祉法人「共生会」の理事で、ほしの郷の施設長を務める増田千明さん(48)はこう振り返る。

 25日朝、ほしの郷で仕事をしていた増田さんは、隣の長南町にある系列の施設に車で向かった。しかし、滝のような豪雨による土砂崩れや冠水で道路はあちこちで寸断しており、やむなく途中で引き返した。その間にも、ほしの郷に残った職員からは「中庭が川の水であふれている」「施設に水が入ってきた」といった急を知らせる電話がひっきりなしにかかってきた。

 増田さんは近くにある長柄町役場への避難を指示したが、出入り口となっている唯一の私道が倒木と土砂崩れのため通行できず、役場への避難は断念。午前11時ごろ、39人の入所者のうち1階にいた20人を職員がエレベーターで2階に避難させ始めた。だが、その途中に泥水が1階に入り込んできたため、最後には職員が入所者を背負って階段で上り、全員を避難させた。

 わずか1時間ほどで20センチほど床上浸水し、施設は停電。浄化槽が水をかぶってトイレも利用できなくなり、職員は風呂にためていた水を使ったり、入所者におむつを着けてもらうなどで対応した。かろうじて使えたガスで備蓄の水や非常食のレトルトのおかゆを温め、食事は何とかしのいだという。

 雨が上がり、25日午後5時ごろに水は引いたが、私道が通行できず、増田さんは施設に戻れなかった。「出発したときは何ともなかったのに、土砂崩れの被害もひどかった」

 一時孤立したものの、翌26日午後には私道をふさいでいた土砂の一部が取り除かれ、施設の電気も復旧した。ただ、1階は浸水の影響で現在も電気は使えないままだ。27日には入所者全員が長南町の施設に移り、職員は後片付けや復旧作業に追われている。

 施設は台風15号で約3日間、19号でも約2日間にわたって停電した。元の状態に戻るのは「早くて年内といったところ」と増田さん。先の見えない状況に表情を曇らせた。



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