米国による対外援助凍結、HIVやポリオ対策に深刻な影響 ― WHO事務局長が警鐘

世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム・ゲブレイエスス事務局長は、米国の対外援助凍結により、HIV、ポリオ、サル痘、鳥インフルエンザなど、世界的な感染症対策プログラムに深刻な影響が出始めていると強い懸念を表明しました。本記事では、援助凍結の現状と国際社会への影響について詳しく解説します。

米国援助凍結の現状とWHOの訴え

トランプ前大統領は、米国国際開発局(USAID)の支出に透明性がないとして、その閉鎖を推進し、対外援助を凍結しました。これに対し、テドロス事務局長は、代替資金が見つかるまで援助再開を検討するよう米国政府に要請しています。

alt=WHO本部で記者会見を行うテドロス事務局長alt=WHO本部で記者会見を行うテドロス事務局長

ジュネーブでの記者会見で、テドロス事務局長は、特に「米大統領エイズ救済緊急計画(PEPFAR)」の停止により、50カ国以上でHIVの治療、検査、予防サービスが中断されたと指摘。医療施設の閉鎖や医療従事者の休職を余儀なくされている現状を訴え、世界の保健衛生への深刻な影響を危惧しています。

国際社会への影響:感染症拡大の危機

保健専門家は、米国の援助削減により、感染症の拡大やワクチン開発の遅延が懸念されると警告しています。USAIDは年間約400億ドルを人道支援に費やし、その多くは保健プログラムに充当されています。支援の多くはアジアやサハラ以南のアフリカに、そしてウクライナの人道支援にも活用されており、その凍結は世界規模で大きな影響を与えています。

HIV対策への打撃

WHOは、HIV治療に不可欠な抗レトロウイルス薬などの不足に対し、新型コロナウイルスパンデミック時と同様の緊急措置を講じていると発表。各国の医薬品供給調整の必要性を訴えています。WHOのHIVプログラム責任者、メグ・ドハティ氏は、各国からの支援要請は短期的なアプローチに過ぎず、より効果的な長期的な解決策が不可欠だと強調しました。

alt=HIV検査キットalt=HIV検査キット

今後の展望と課題

トランプ前大統領はUSAIDを「無能で腐敗している」と批判し、閉鎖を主張。イーロン・マスク氏も同調する姿勢を見せています。しかし、具体的な証拠は提示されていません。さらに、米国はWHOからも脱退しており、国際的な保健協力体制に大きな影を落としています。バイデン政権下ではWHO最大の資金提供国だった米国。その不在は、世界的な感染症対策に大きな課題を突きつけています。

鳥インフルエンザへの影響

テドロス事務局長は、米国のWHO脱退により、鳥インフルエンザ感染例報告の減少も指摘しています。国際的な情報共有の停滞は、感染症対策の大きな妨げとなる可能性があります。

国際協力の重要性

パンデミックや感染症の脅威は、国境を越えて世界中に影響を及ぼします。国際協力は、これらの脅威に立ち向かう上で不可欠です。米国の対外援助凍結は、世界的な保健衛生の向上を目指す国際社会の努力に水を差すものであり、早急な解決策が求められています。