バルサアカデミー葛飾校、区営施設優先使用権を巡る不透明運営疑惑

「世界最高峰のサッカークラブ」と称されるスペインの『FCバルセロナ』が公認するサッカースクール「バルサアカデミー」。その日本国内にある「バルサアカデミー葛飾校(東京都葛飾区)」で、旧運営団体による不透明な運営実態が明らかになり、波紋が広がっています。この問題は、葛飾区が第三者委員会を設置し、真相究明に乗り出すまでに発展しており、区民の税金が投入された公共施設の利用権を巡る疑惑に注目が集まっています。

問題発覚の経緯と旧運営団体「キッズ未来」の事業譲渡

バルサアカデミー葛飾校は2015年4月に開校。当初は「一般社団法人キッズチャレンジ未来」(以下、キッズ未来)が運営主体となり、サッカー業務は民間企業のアメージングスポーツラボジャパン(以下、アメージング社)に委託されていました。しかし、この運営体制には当時から疑問の声が上がっていました。

問題が表面化したのは昨年9月。葛飾区議会がキッズ未来に決算書を要求したところ、同年11月に提出された決算書から衝撃の事実が判明しました。2023年4月に、キッズ未来がアメージング社に対し、4900万円で事業を譲渡していたのです。

この事業譲渡に対し、葛飾区の小林等区議は「区民からなる団体だからこそ、区の施設の優先使用を認めていた。運営主体が民間となるなら話は全く異なる」と強く指摘しています。葛飾区はバルサ葛飾校のグラウンドとして、区営の東金町運動場の優先使用を認め、さらに夜間照明や人工芝の導入など、総額4億6000万円もの税金を投入して整備を行いました。区議は、キッズ未来がこの区営施設の優先使用権を“ウリ”にして第三者に事業譲渡し、利益を上げていたのではないかとの疑念を抱いています。葛飾区は譲渡の事実を昨年11月まで把握していなかったと主張していますが、区議会は取引の承認経緯の解明を求めています。

バルサアカデミー葛飾校のグラウンド。区営施設優先使用権を巡る不透明運営疑惑と葛飾区議会・区役所の対立を示すバルサアカデミー葛飾校のグラウンド。区営施設優先使用権を巡る不透明運営疑惑と葛飾区議会・区役所の対立を示す

葛飾区の対応とスクール生への影響

事業譲渡の発覚を受け、葛飾区は昨年11月、キッズ未来との協定を破棄しました。現在はアメージング社が単独で運営を継続していますが、区との間でグラウンド優先利用の新たな協定は締結されていません。葛飾区は、現在在籍する小・中学生400人のスクール生が混乱なく活動を続けられるよう、暫定措置として今年9月までの優先使用を認めています。しかし、10月以降は一般区民と同等の扱いとなり、グラウンドが従来通り使えなくなる可能性が生じています。

この事態に対し、保護者からは強い反発の声が上がっています。「ここに入るために葛飾区に引っ越してきたのに」「子供たちは純粋な気持ちでサッカーがしたいだけなのに、今後も無事に続けられるか心配です」といった切実な声が寄せられており、子供たちが世界最高峰のサッカー教育を継続して受けられる保証がないことに不安が広がっています。

疑惑の深まる背景:元副区長の関与とアメージング社の主張

この問題が「不透明な運営」と称される背景には、さらなる疑惑が指摘されています。ある区議は、葛飾区が事業譲渡を事前に知っていた可能性を指摘しています。2024年5月に辞職した小林宣貴元副区長は、開校当時の政策企画課長として事業を主導する立場にありました。しかし、問題発覚後、区議会で「譲渡はまったく存じ上げなかった」と答弁しながら、最終的に「一身上の都合」で辞職しています。これは事実上の引責辞任と見られており、議員の多くは「逃げた」と認識しています。

一方、アメージング社の濱田満代表取締役は、2024年6月下旬に区議に送付した「意見書」の中で、キッズ未来の代表理事が「事業譲渡に関しても、2019年から複数回にわたり、当時の小林宣貴副区長に相談したと証言しております」と明確に記載しています。これは元副区長の答弁と真っ向から矛盾する内容であり、区の事前認識の有無が最大の焦点となっています。

さらに、キッズ未来の決算書からは、赤字続きの中で年間1000万円を超える高額な接待交際費が計上されていたことも発覚しています。接待先として副区長らが対象になっていなかったかなど、資金の流れにも疑念が持たれています。

第三者委員会の調査と今後の展望

これらの疑惑を受け、葛飾区は第三者委員会の設置を決定し、問題の追及に乗り出しました。2024年8月19日には、小林元副区長やアメージング社の濱田代表取締役ら関係者を招き、区議会の全員協議会が開催される予定です。小林区議は「スクールに通う親御さんの不安を解消するためにも、あいまいなままにはしません」と、区の責任を厳しく追及する姿勢を示しています。

FRIDAYデジタルが葛飾区に対し、事業譲渡の把握時期、小林元副区長の辞任理由、接待疑惑について質問状を送ったところ、区は「現在、本件に関しましては、第三者調査委員による調査を行うことを決定しました。本区としましては、その推移を見守りつつ、調査結果を待つこととしております。小林宣貴元副区長の辞職については、一身上の都合により辞任する旨の申し出があり、区がこれを受理したものです」と回答しました。また、キッズ未来はホームページが削除され、SNSの更新も途絶えており、現在連絡がつかない状態が続いているとのことです。

憧れのFCバルセロナのトレーニングメソッドを学び、日々ボールを追いかける400人の子供たちの未来は、この不透明な運営問題の行方に大きく左右されます。葛飾区と関係者には、徹底した真相究明と、子供たちが安心してサッカーを続けられる環境を確保する責任が強く求められています。

出典:FRIDAYデジタル