【アンカレジ(米アラスカ州)=淵上隆悠】米紙ニューヨーク・タイムズなどは16日、ロシアのプーチン大統領が15日に行われた米国のトランプ大統領との会談で、ウクライナ軍の東部ドンバス地方(ドネツク、ルハンスク両州)からの撤退と全域の割譲を求め、見返りに現在の前線での停戦と、ウクライナへの再攻撃をしないと書面で約束することを提案したと報じた。トランプ氏はプーチン氏の提案に同調し、ウクライナに受け入れを求める構えだ。
同紙がトランプ氏とウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領や欧州首脳らとの電話協議の内容を知る欧州高官の話として伝えた。プーチン氏は会談で、ウクライナでのロシア語の公用語への復活やロシア正教会の安全の保証も求めたという。
ロイター通信によると、トランプ氏は電話協議で、即時停戦ではなく和平合意を追求すべきだという点でプーチン氏と一致したと語り、ゼレンスキー氏に露側と「合意を結ぶべきだ」と迫ったが、ゼレンスキー氏は拒否した。
米政策研究機関「戦争研究所」によると、ロシアはドンバス地方のうちルハンスク州では州全域を支配下に置くが、ドネツク州の支配地域は州全域の約7割にとどまる。同州の25%程度(約6500平方キロ・メートル)はウクライナの支配下で、露軍の攻撃を防ぐための重要拠点も多いことから、ウクライナにとって露側への割譲はハードルが高い。
トランプ氏は18日に米ワシントンでゼレンスキー氏や欧州首脳らと会談し、露側の提案を協議するとみられるが、露側の主張に寄り添う姿勢が目立っている。
トランプ氏は米露首脳会談前、プーチン氏が停戦に同意しなければ、露産原油などを取引する第三国に制裁関税を課すと繰り返し警告していたが、会談後、停戦協定は「多くの場合、守られない」(SNSへの投稿)と否定に転じた。米FOXニュースのインタビューでは、プーチン氏との間で「合意が近づいている」と述べ、ウクライナは「合意を結ぶしかない。ロシアは大国で、ウクライナはそうではないからだ」と語った。