総選挙を前に、EU離脱の「命運」握る国民は何を思うか





4日、英国会議事堂前で、離脱を支持する政党への投票を訴える市民(板東和正撮影)

 総選挙は、英国の欧州連合(EU)離脱が決まった国民投票から3年余りを経て、離脱の方針をめぐる判断を再び有権者に委ねる。ただ、総選挙では、離脱を掲げる政党同士の争いも予想され、有権者は難しい判断を迫られそうだ。離脱問題の「命運」を握る国民は今、何を思っているのか。

 「今こそ、国民投票で決まった離脱の道に英国を導くときだ」

 11月4日昼過ぎ。ロンドンの英国会議事堂前で、離脱を支持する政党への投票を通行人に呼びかける団体の姿があった。呼びかけに参加した技術者、エリック・ロイズさん(45)は「総選挙は、国民投票から英国の方針が変わっていないことを証明するチャンスだ」と興奮気味に語る。

 一方、議事堂から徒歩数分の距離にあるイベント会場周辺では、残留派の市民が、「有権者の力で離脱をやめろ」と書かれたプラカードを掲げていた。

 英調査会社デルタポールが10月31日~11月2日に1500人の有権者を対象に実施した世論調査では、離脱派が41%、残留派が43%と拮(きっ)抗(こう)している。残留派の市民はこの日、「国民投票の結果を総選挙で逆転できる」と自信を見せた。

 ただ、今回の総選挙は、離脱派と残留派の政党が票を奪い合う「単純な構図」にはならない。ジョンソン首相とEUが合意した離脱協定案での離脱を訴える与党・保守党は、野党のほか、早期離脱を訴える「離脱党」とも争う見通しだ。 ジョンソン氏より強硬な離脱方針を掲げる離脱党のファラージ党首は、英領北アイルランドの関税手続きは当面EUルールに従うとしたジョンソン氏の協定案を「離脱ではない」と非難している。だが、離脱派の会社員、マット・グーソンさん(38)は「両党ともに離脱という方針は一緒でどちらに投票すればよいかが分からない」と悩む。

 また、国民投票の再実施を主張する最大野党・労働党も、EU残留を訴える他の野党と総選挙で連携しない。残留派のジェームス・シェーリンさん(58)は「離脱に反対する有権者の票が分散しかねない」と危機感をあらわにした。

 一方、総選挙の実施に否定的な意見もある。英調査会社ユーゴブが約3200人の有権者に、総選挙が離脱問題を解決するかを質問したところ、半数以上が「解決しない」と答えた。 総選挙では、市民の離脱に対する考えが直接、反映されない可能性が高い。有権者は離脱方針だけでなく、社会保障などの他の政策も評価して政党を選ぶためだ。大学生のハリソン・ロディティ・ヨーさん(23)は「離脱問題を総選挙に委ねた政権の判断は誤っている」と指摘する。

(ロンドン 板東和正)



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