藤井聡太王将(竜王、名人、王位、王座、棋王、棋聖=22)に永瀬拓矢九段(32)が挑戦する将棋の第74期王将戦7番勝負第4局が15、16の両日、大阪府高槻市「摂津峡花の里温泉 山水館」で行われ、後手の永瀬が藤井を下した。
シリーズ対戦成績は藤井の3勝1敗。藤井の2日制の先手番の連勝記録は32でストップ、3年8カ月ぶりに先手番で敗れた。第5局は3月8、9日に埼玉県深谷市「旧渋沢邸 中の家」で行われる。
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大阪府高槻市の「山水館」。創業50年以上の温泉旅館にたどり着くまでは渓谷の細い道が続く。藤井は惜しみなく時間を使い、最善を求めたが、険しい道に迷い込んだ。
「分岐が多い将棋だった。終盤に精彩を欠いてしまったのは残念でした」。終局後、無念そうな表情を浮かべた。戦型は角換わり腰掛け銀。44手目、研究の鬼と呼ばれる永瀬が前例のない玉寄りを見せ、研究手をぶつけた。藤井は長考しながらも、受けて立った。中盤から猛攻を繰り出すも、終盤の際どい寄せで、読み抜けがあったのか。「分岐が多く、読みを求めることができなかった」。同じ言葉を繰り返し、形勢不明の状態の難しい将棋。終盤まで主導権を握ったが、痛恨の逆転負けだった。
ここまで2日制のタイトル戦の先手番で34勝1敗(1千日手)。2日制先手番の黒星は21年6月の王位戦第1局以来、3年8カ月ぶり。同年7月王位戦第3局から続いていた2日制先手番での勝利は32連勝でストップした。
2日制先手番の連勝については「ぜんぜん、それは知らなかったです」と苦笑いし、「全体的に難しい将棋だった」と振り返った。
歴代5位の谷川浩司17世名人(62)と並ぶ、通算タイトル27期の獲得は、第5局以降に持ち越しとなった。幼いとき、谷川の相手玉を素早く寄せる終盤術「光速の寄せ」に憧れた。第4局の立会人は偶然にも、谷川が務めた。目の前での大記録を達成はできなかったが、軍曹永瀬との激闘は続く。
第5局に向けて「後手番になるので大変だとは思いますが、頑張りたいと思います」と気持ちを切り替えていた。深く正確な読みで、もう1度、険しい道を歩む。【松浦隆司】