政治の中心地、東京・霞が関から“マル秘”政界情報をくわしくお伝えする『文藝春秋』の名物コラム「 霞が関コンフィデンシャル 」。最新号から、ダイジェストで紹介します。
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財務相を支える女性たち
昨秋に発足した石破政権で、古巣の財務省にトップとして返り咲いたのが加藤勝信財務相(昭和54年、旧大蔵省)だ。「花の54年組」と言われた同期では、木下康司、香川俊介、田中一穂の3氏が財務次官に上り詰めたほか、古澤満宏元財務官ら次官級も名を連ね、目立つ存在ではなかった。だが、義父・加藤六月元農水相に引き立てられて政界入りすると、安倍元首相の側近として厚労相や官房長官などの重要ポストを歴任してきた。
大臣としてまず独自色を発揮したのは大臣秘書官人事だろう。ともすれば肥大気味の自尊心を黒灰色の地味な背広で包み隠す「マッチョ職場」だった財務省も、近年は各部署に女性幹部の姿が目立ち始めた。もとより加藤氏は初入閣した一億総活躍担当相時代、大臣秘書官に女性を起用するよう指示。幹部職員への登用にも力を入れるなど「女性活躍」に熱心とされる。そして今回も秘書官に寺﨑瑞枝氏(平成14年、財務省)を起用。同省の女性職員が財務相秘書官となるのは初めてだ。
寺﨑氏は主計、主税、理財各局のほか、国税庁で査察業務の経験もある。子育てをしながら手堅くキャリアを重ねる姿は、省幹部からも「期待の中堅職員だ」と広く信頼を寄せられる。
“サポート役”としての心得は、身内から学んできた面もあるだろう。寺﨑氏の父が、安倍政権を一貫して裏で支えた長谷川榮一元首相補佐官(昭和51年、旧通産省)であることは知る人ぞ知るところ。長谷川氏と言えば第一次政権の瓦解で失意に沈む安倍氏を高尾山登山に連れ出し、再起につなげた「美談」は語り草だ。黒子として、ロシアとの領土返還交渉などにも深く関わった。
また、寺﨑氏の夫は、職場結婚した寺﨑寛之主計局主計官(平成10年、旧大蔵省)である。寛之氏は、主税局調査課長や文科担当主計官などを務め、今は司法や経産分野の予算査定に目を光らせるが、経済再生担当大臣を務めた西村康稔氏の秘書官だったことは、できれば伏せたい過去かもしれない。
※本記事の全文(約5500文字)は「文藝春秋」2025年3月号と、「文藝春秋PLUS」に掲載されています( 霞が関コンフィデンシャル )。記事全文では下記の内容をお読みいただけます。
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★新次官と首相の距離
1月17日付で、船越健裕外務審議官(昭和63年、外務省)が事務次官に就任した。在米日本大使館や官房総務課などを…
★財務相を支える女性たち
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★インサイダーの“余波”
昨年末、金融庁で発覚したインサイダー事件が波紋を…
■連載「霞が関コンフィデンシャル」
【2024年】
4月号 財政健全化への新目標、人口減に向け本格始動、新体制の宮内庁、愚痴る首相側近
5月号 「ミスター円」の将来、“女傑抜擢説”の裏側、「復活組」の活躍、異能のアラビスト
6月号 令和のモーレツ官僚、脱原発の知恵袋、準キャリアのエース、サイバー新組織の陣容
7月号 官僚たちの選挙戦、「改革派」の真価、処分を克服できるか、新御用掛の安定感
8月号 政権を去る「恐竜」、波紋を呼んだ中企庁長官、新・プリンスの実力、オールジャパンの真価
9月号 処分を逃れた「巨悪」、財務次官の系譜、女性検事総長への嘆息、長官レースの号砲
10月号 新秘書官の本命候補、「脱・警察」となるか、「イトウ違い」の裏側、旧自治省の“復権”
11月号 新総理との距離感、原発再稼働の勝負所、少子化対策のキーマン、高専出身次官の力量
12月号 不安漂う首相秘書官、首相肝いりの官房副長官、間合いを詰めた金融庁、相次ぐ県警不祥事
【2025年】
1月号 「壁」を巡る同期の攻防、「岸田議連」の火種、元首相秘書官に“赤紙”、1年延期の新次官
2月号 野党対策の黒子たち、官邸に漂う閉塞感、総務官邸官僚の実力、次期警察人事の行方
3月号 《今回はこちら》
「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2025年3月号