韓国経済の減速が鮮明化しています。2024年の10-12月期、そして年間を通して、韓国の全ての市道で小売販売が減少するという、統計開始以来初めての事態となりました。これは内需景気の低迷を如実に示すもので、地域経済への深刻な影響が懸念されています。
消費低迷の現状:全国的な小売販売減少
韓国統計庁の発表によると、2024年は全国17の市道全てで小売販売が減少しました。これは2010年に関連統計の集計開始以来初めての出来事です。統計庁のチョン・ソンギョン所得統計課長は、「乗用車、燃料、専門小売店など、幅広い分野で販売が落ち込んでいる」と述べています。
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地域経済への影響:蔚山市の苦境
特に深刻なのが、現代自動車、SKエネルギー、サムスンSDIなど大手企業の工場が集積する蔚山市です。小売販売は6.6%減と全国で最も大きな落ち込みを見せています。背景には、自動化の進展や生産拠点の海外移転による雇用減少、そして2015年から10年連続で続く人口の純流出があります。消費を支える人口の減少は、地域経済の疲弊に直結する深刻な問題です。
京畿道(5.7%減)、江原道(5.3%減)、仁川(5.0%減)、ソウル(4.4%減)も販売減少が顕著です。京畿道にはサムスン電子、SKハイニックス、起亜などの工場と協力会社が多く、仁川も製造業中心の中小企業が集積しています。これらの地域では、企業業績の悪化が地域経済に大きな影を落としていると考えられます。
一方、釜山(1.5%減)、忠清北道(1.5%減)、忠清南道(0.8%減)、世宗(0.1%減)は比較的減少幅が小さく、地域差が見られます。
消費低迷の要因:高金利・高物価、政局不安
全国的な消費低迷の要因としては、高金利と高物価の長期化が挙げられます。2024年1月から8月までの消費者物価指数上昇率は、韓国銀行の物価安定目標値である2.0%を上回る2~3%台で推移しました。
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さらに、2024年12月の尹錫悦大統領の非常戒厳宣言に端を発する政局不安も消費心理の悪化に拍車をかけました。将来の景気に対する悲観的な見通しや、高金利による家計負債の負担増加も、消費者の財布の紐を固く締めている要因と言えるでしょう。
鉱工業生産とサービス業:地域格差の拡大
小売販売だけでなく、鉱工業生産やサービス業生産にも地域格差が見られます。全国的には半導体産業を中心に鉱工業生産は4.1%増加しましたが、江原道(7.8%減)、忠清北道(5.2%減)、ソウル(3.0%減)は減少しました。統計庁は、電気・ガス、電機装備、衣服・毛皮などの生産減少が影響したと説明しています。
サービス業生産も全国的には1.4%増加しましたが、世宗(2.6%減)、慶尚南道(2.4%減)、全羅北道(1.0%減)は減少しました。不動産、金融・保険などの生産減少が原因とされています。
輸出と人口移動:地方消滅と首都圏一極集中
輸出も全国的には8.1%増加しましたが、大邱(19.4%減)、光州(12.2%減)、全羅北道(9.7%減)は大幅に減少しました。大邱は二次電池素材の輸出不振が響いています。一方、半導体工場が集まる京畿道は24.4%増と高い成長を見せており、地域間の格差が浮き彫りになっています。
人口移動を見ると、地方消滅と首都圏一極集中が続いています。2024年はソウル、京畿道、仁川の首都圏に4万5169人が純流入しました。これは首都圏に大学、雇用、生活インフラなどが集中しているためです。しかし、ソウル単体では4万4692人が純流出しており、住宅価格の高騰が京畿道や仁川への流出を招いているとみられます。
韓国経済の課題と展望
韓国経済は、高金利・高物価、政局不安、地域格差の拡大など、多くの課題に直面しています。これらの問題を解決し、持続的な成長を実現するためには、政府による効果的な政策と企業の積極的な投資が不可欠です。今後の韓国経済の動向に注目が集まっています。