(放送コラムニスト:高堀冬彦)
第三者委員会によるフジテレビの不祥事の調査結果は3月末までには出る。それがフジにとって深刻なものでない限り、4月以降にはCMが戻ってくるという。
【写真】フジテレビ最初の「黄金期」はこの人の力があったからこそ。「銭形平次」の放送終了が決まり、記者会見するフジテレビ副社長時代の鹿内春雄氏(右)
もっとも、これは広告代理店の読み。調査結果がどうなるのか分からないのだから、予断を許さない。またCM再開にあたってフジは再発防止策の提出などスポンサーから厳しい条件を突き付けられそうだ。
フジテレビの個人視聴率は4年度連続で4位。規模が違うテレビ東京を除くと最下位である。CM売上高は個人視聴率とほぼ比例するから、やはり4位。昨年度のCM売上高は日本テレビが約2192億円、テレビ朝日が約1668億円、TBSが1593億円、フジが約1473億円だった。
この業績なので、フジは他局並みの制作費を捻出できない。昨年度の制作費は日テレ約893億円、テレ朝約791億円、TBS約937億円、フジ約682億円である。
今回の不祥事はフジの深刻な業績不振の中で起きた。不祥事と業績不振は深く関わり合っていると見るべきだ。ではその業績不振と不祥事を招いた理由は何か。長年テレビ業界をウォッチしてきた筆者の視点から、7つ挙げてみたい。
■ 低視聴率番組が並ぶ中で比較的堅調だった『だれかtoなかい』
元タレントの中居正広氏(52)と女性の間でトラブルが起きたのは一昨年6月だった。2人を結び付けたのは当時のフジの編成幹部と見られている。
番組制作の最高責任者だった編成担当専務の大多亮氏(66)はトラブルを知り、「重い案件」と認識したが、なぜか社内のコンプライアンス担当部署には黙っていた。これがすべての過誤の始まりである。なお、大多氏は昨年6月、フジの親会社であるフジ・メディア・ホールディングス(FMH)と資本の関係がある関西テレビの社長に転出した。
一昨年8月には前社長の港浩一氏(72)も中居氏と女性のトラブルを知った。しかし、やはりコンプライアンス部門には伏せた。一方で中居氏がMCだったバラエティ『だれかtoなかい』は続行させた。
フジは低視聴率番組が目立つが、この番組は比較的好調だった。女性の人権を守ることより視聴率を優先したのか。そう見られても仕方がないだろう。
低視聴率と業績不振は不祥事に結びつきやすい。言葉は悪いが、貧すれば鈍するである。低視聴率こそが業績不振と不祥事を招いた第一の理由と見る。