深センから香港へ、今も続く武装警察の無言の圧力





中国の短文投稿サイト「微博」の中国中央テレビ公式アカウントに投稿された、広東省深●(=土へんに川)で武装警察がデモ鎮圧訓練をする映像の一場面(共同)
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 4カ月以上にわたり政府への抗議活動が続く香港。10月末に開かれた中国共産党の重要会議では事態の沈静化に向けた姿勢が鮮明にされたが、境界を接する広東省深セン市では今も武装警察(武警)の部隊が留まり香港のデモ隊に無言の圧力を与え続けている。中国本土では香港に対する反感も強まっており、中国政府が強硬姿勢を緩めることができない事情もうかがわれる。(広東省深セン 三塚聖平)

 IT企業が集まる街として日本でも有名になった深セン。新興企業が集まるビジネス街からほど近い場所に位置するスポーツ競技場「深セン湾体育センター」の前で、深セン在住のタクシー運転手の男性は「あそこに今も武警がいる」と言葉少なに話した。

 香港の抗議デモが激しさを増した8月、同競技場に武警の部隊が集結していると一斉に報じられた。香港のデモ隊が身につけているような黒シャツの集団を制圧する訓練が行われている様子も伝えられ、「香港のデモ鎮圧に武警が投入されるのではないか」という見方が広がった。

 それから2カ月超が過ぎたが、中国国内の治安維持などを主な任務とする武警部隊の姿は今も競技場にあった。敷地内のフットサルコートの脇には、武警のものとみられる迷彩色の車両がずらっと並ぶ。競技場には緊張感が漂っていたが、その周辺の深セン湾を望む公園ではランニングや散歩を楽しむ人々の姿があった。

 競技場は香港との出入境施設から徒歩圏内にある。香港とつながる橋を使えば中心部まで車で1時間足らずの距離だ。デモ隊にプレッシャーを与えるため、あえて目立つ場所で存在を見せつけているという見方も香港では根強い。

 一方、深セン市内では香港の抗議デモに対する否定的な反応が目立った。前出のタクシー運転手の男性は「デモ隊はヤクザみたいだ。良い印象はない」と感想を述べた。中国本土では、デモ隊の暴力行為が盛んに報じられていることもあり反感は強まっている。また、深センで映像関係の仕事に携わる40代の男性は「以前は香港の方が豊かだったので、われわれの立場は低かった。今は深センも発展したので、香港に大きな顔をされる必要はない」と複雑な感情を見せた。

 10月末に閉幕した中国共産党の第19期中央委員会第4回総会(4中総会)では、香港情勢を安定させるべく新たな法律制度と執行の仕組みを整備する方針が示された。今後、抗議活動を押さえ込むための管理強化策が打ち出されるとみられる。中国本土の香港に対する厳しい目線に応える必要もあり、習近平指導部としては強硬姿勢を崩せない側面もあるとみられる。



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